クルルの妹さん［6］ (ページ16)

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15話ページ16

可笑しい、

何故僕が侵入者相手に防戦を強いられているんだ。

冥「あっはは全然届きませんね〜お兄様♪」

阿「くっそ……」

空気が重たいことは予想以上の苦痛だった。

思ったように早く動けない。

なのにあいつは平気で逃げ回るし、鎌の長さを簡単に変え何処からともなく襲ってくる。

阿「何故僕を狙った？」

冥「んー俺言いましたよね？

お兄様って」

阿「そんなことはいい

自分の主はどうした？」

冥「乗っ取ったんだよ」

阿「！」

ニタリと笑ったその顔と先程の風船のような軽い声からは想像がつかない程の低く恐ろしい声

あぁ、僕は初めてこいつの主を憐れんだ。

冥「だから自由にできる。

あいつもこの世界も…」グサッ

阿「は？」

冥錬緋の胸元を貫いていたのは女の腕

狂気的な笑みを浮かべていた冥錬緋の顔が苦痛で歪み始めた。

冥錬緋の背後から現れたのは美しい茶色の髪と紅い瞳を持った吸血鬼

冥「 …お……まえ………

なぜ………」

『もう何かを恐れる人生は終わり』

揺れ動かない筈の僕の感情が一瞬揺れた。

この女は僕に何を見せるつもりなんだ？

冥「何を……言ってる……？」

『奪われてただけの女の子は死んだ。

私は完全な吸血鬼になった。

A・ツェペシは第四位始祖として生き続ける』

冥「ハッ！

お前の過去は消えない…！

俺はお前に思い知らせた。

親を殺され、実の兄と姉と引き離され、友も殺され、夫はお前を裏切り、愛した人間すら殺された！

お前はずっと孤児なんだ！」

『孤児じゃないわ』

冥「！？」

『愛した人が私の目の前にいる』