乗り越えろ、過去を。【2】

▽トラウマ ページ22

コマンダーside




憎たらしいほど優雅に舞う巨大なチョウの頭上に、よく見ると人影がある。


その姿を確認した瞬間、背筋が凍るような気がした。




コマンダー「ぁ…、…ぁっ、…」




意に反して、ぶるぶると…どんどん震えていく体。




…一目見ただけでわかった。


そして思い出す、過去のトラウマ。





コマンダー「〜っひ！」





ドクンッと大きく動く鼓動。


反射的に左胸の辺りをぎゅっと握る。




大げさなくらい震える声で、やっとの事で問いかけた。





コマンダー「…どう、して…」



「どうして？

大事な研究データを盗んで逃げ出したのは誰だったかな？


忘れたとは言わせないぞ。…No.509。」



コマンダー「…っ！？」




その、声に。

呼び方に。



心臓がきゅっと掴まれたかのように全身が硬直する。





コマンダー「………ッハ、…ハァッ…！」




しばらくの間、息をするのも忘れていたようで。




……くるしいっ…





ギーク『コマンダー、大丈夫！？』





耳元で聞こえたギークの声にびくりと肩を揺らすほど、敏感になっていた。





コマンダー「…ひっ……だぃ、…じょぶ…」




…な訳、ないんだけど…




コマンダー「通信、切るぞッ…」



ギーク『え？ちょっ、待っ＿＿』




ギーク、ドクターとの通信は切った。


この場にいるメンバーは全員眠ってる。




…あいつらが眠ってくれたのは、ある意味好都合かもしれない。


だって…




コマンダー「ふぐっ、…」





……こんな姿、見せらんねぇから…

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