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真っ直ぐに俺を見る松川の目は真剣そのものだった。わかっているけれど、やっぱり俺はまだ不安だったんだ、と理解した。
「ごめん」
「わかってくれた？」
「うん」
ならよし、と俺の頭を優しく撫でる。
「片想い歴長いからさ」
「どんくらいだったの」
「んー？でも高校上がってからかな？」
「ふーん」
考え込むように唸り視線を俺から逸らした。それから一人で気持ちを整理したのか、俺の手を再び握り「行こ」と緩く笑った。
着いたのは少し古めかしい雰囲気の、カフェというより喫茶店だった。
「喫茶店か、いいね」
「カフェだろ」
「今度連れてってやるな、カフェ」
「え」
ドアを押すとドアチャイムを鳴った。うん、喫茶店。
「松川は茶が飲めるとこ全部カフェだと思ってんの？」
「違ぇの？」
「違うね」
小さく笑いながら言うと松川は少し眉間に皺を寄せた。機嫌を損ねてしまう前に謝る。
「ごめんて。今日は俺が出すから」
「そういうのは別に、いい」
「いいって、俺がおちょくったんだし。」
「あんがと」
気にすんな、と笑えば松川はこちらを見てにこりと笑った。俺の大好きな笑顔。
ふと店内の客を見ると、二人組の男性しかいなかった。そういうことか。
「ここは俺たちのための店か」
「そ。調べた」
「まぁ落ち着くわな」
「だべ」
初老の男性が俺たちの席へメニューを持ってきた。開くと店構えとは少し離れたかわいらしいデザートやドリンクが並んでいた。
「何にする」
メニューと睨めっこする松川を見る。少し口元が緩んでいる。
「チーズケーキと、カフェラテ」
「チーズ好き過ぎな」
「嫌いな人いんの？」
「いるとは思う」
笑いながら松川が俺の方にメニューを向けた。
「俺はね、コーヒーとガトーショコラ」
「いいね」
視線を上げると既に近くまで先程の男性が来ていた。
「ガトーショコラとコーヒーのセットと、チーズケーキとカフェラテのセットお願いします」
「お砂糖は使いますか？」
「あー、一応お願いします」
かしこまりました、と言ってメニューを持ち奥へ戻っていく。頬杖をついて松川が俺を見ていた。
「Aってブラック飲めるの？」
「あんま飲まない。酸味強いと苦手」
「へー」
松川は薄い反応のまま俺を見る。何があったのかわからないが、ずっと様子がおかしい。
「松川、なんかあった？」
「なんで？」
「んー、なんか変」
昼飯の時とか、と言えば姿勢を崩し椅子の背もたれに身体を預け頭を掻く。
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作者名：シャバ僧 | 作成日時：2022年6月23日 21時
