54 ページ6
放課後、急いで準備していると、前の席でのんびりしている松川に「今日は月曜だぞ」と笑われた。国見に教えたくせにすっかりオフなのを忘れていた。
「オフか。何するかなー」
「俺は帰って寝る」
「育ち盛りかよ」
笑いながら玄関へ向かっていると花巻と出会した。
「おつー」
「おつかれ」
そのまま三人で歩くと花巻が口を開く。
「お前らデートしねぇの？」
「あー」
二人とも考えていなかった。顔を見合わせて「その手もあったか」なんて言い合う。
「お前らマジで付き合ってんのか？」
「花声でか」
「シットか？」
「おすわりすんぞ」
「置いてくな」
サイテー、と思ってもないくせに真顔で言う花巻に松川と二人で笑う。そのまま生徒用玄関まで行くと及川と岩泉がいた。
「三人揃ってどこ行くのー？」
及川さんたちも混ぜて！、と岩泉の意思は無視して及川が言う。それに岩泉は顔を顰めるが、特に文句は言わなかった。
「特に決めてない」
「つーか俺は女のコと待ち合わせあるし」
「え、花が？」
「絶対ウソじゃん」
「ウソじゃねーし！」
じゃあなー、と手を振りながら帰る花巻を四人で見送る。
「マッキーいないのにみんなで行くのもねぇ」
「だな」
「そういうコトで」
「明日なー」
言いながら及川と岩泉、松川と俺でそれぞれ分かれる。
二人きりになり、家ではない方向に歩いていた。
「どこ行くん？」
「んー？まぁ、カフェとか？」
「ほーん」
こっちにカフェはあったか？と思いながら松川の後ろをついて歩く。不意に手を握られた。
「びっくりした」
「ここまで来りゃダイジョーブだろ」
そっと握り返すと、指を絡ませてきた。恋人繋ぎ。顔に熱が集まる。
「なんか、こう、」
「うん」
「死にそう……」
なにそれ、と笑い俯いた俺の顔を見ようと松川が身体を屈ませる。「どんな顔してんの？」と松川の楽しそうな声が聞こえる。
「なんかムカつく」
「なんでだよ」
「俺だって松川のこと愛でたい！」
「かわいいコト言うじゃん」
話しながら松川に今のところ揶揄われっぱなしなことに気が付く。
「こんな揶揄うとか、やっぱ本当は」
「ストップ」
「何」
言い切ろうとしたタイミングで松川が立ち止まり、繋いだ手をグッと引かれた。身長差のせいで松川のことを少し身体を屈ませた状態で見上げる。
「ちゃんと好きだよ」
「……」
「俺はちゃんと、Aのこと好きだよ」
俺の目を見ながら言い聞かせるように静かに言った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シャバ僧 | 作成日時：2022年6月23日 21時
