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松川side

寝る直前、うつ伏せで俺を見上げるAは正直色々とよくなかった。なんつーか、ネ。
本人に自覚がないからさらにタチが悪いし、狙ってるのかとも思える。

電気を消して暗くなった部屋。隣にいるAの身体に腕を回すと擦り寄ってきた。表情が緩む。
かわいいと言えば怒るけど、それもまたかわいい。頭を撫でる。

「いっせ、ぇ、すき」

半分寝ているのか、殆ど寝言。そんなところも堪らなく愛おしい。抱き締める力を強めれば「んん」と唸っていた。
Aの香りに鼻を埋める。視線を感じた。

「なに?」

「なんでもねぇ」

岩泉と視線を合わさずに話す。怒るでもなく、横向きに寝ていた身体を仰向けに直した。

「他のクラスでも話題になってんぞ」

「へー。何て?」

「松川がAを溺愛してるとさ」

思っていたのとは逆で、周りから見るとそうなるのか、と思う。

「あと、あんまAと距離近ぇからって誰彼構わず睨むなよ」

「睨んでるつもりないけど」

「国見がビビってたぞ」

ああ、と一人納得する。

「国見は睨んだかな」

「お前な……」

呆れて口を閉ざした岩泉に気を止めることなく、Aの頭から顔を離す。ぐっすりと眠っている顔は幼い頃に見たのとあまり変わっていない。

「去年のマネ候補さ」

「ん?ああ、あいつか」

「A狙いだったんだよね」

言うと岩泉は少し間を空けて「なんで知ってんだ」と言いながら額に手を当てる。

「明らかに変だったから聞いた。」

「珍しいな」

「それで、なんか。イヤだなって思ったんだよね」

「……はいはいわかったわかった。さっさと寝ろ」

そのまま黙ると、少しして岩泉の寝息が聞こえてきた。


「中総体で、プレーしてる堂島先輩を見て!松川先輩も一緒の中学ですよね!」

「そーだよ」

レギュラーに媚びるでも、色目を使うでもないそのコは少し照れながら話していた。

「その時の堂島先輩がかっこよくて……青城にいるって聞いたんで受けたんですけど、マネだったからびっくりしました。」

表情を暗くして視線を左下に落とす。

(ああ、ヤダな)

「そか。教えてくれてありがとね」

「いえ!この後も部活頑張ってください!」

そう言ってドリンクを作る用意をしていたAの方へ駆けて行った。

「ヤダな」

バレーをしていないAにがっかりするヤツも、Aのことが好きなヤツも。

「A」

「ん?」

「あのコはダメ」


懐かしい、イヤな夢。
初めての嫉妬はあのコかもしれない。

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作者名:シャバ僧 | 作成日時:2022年6月23日 21時

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