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自主練の時間中に1年の控え選手に洗濯とスクイズの洗浄も頼み、ひたすら今日のゲーム内容を整理していた。
「終わったか？」
「あ、まだ途中で」
「どれ」
監督と溝口さんに書き直し終わった選手分のルーズリーフを手渡す。二人がそれを見ている間に書き上げてしまおうと思いペンを走らせる。溝口さんが俺の手元を見て苦笑いした。
「堂島、お前それを書き直してんのか？」
「そうですよ。これじゃ俺しか読めないんで」
同じように苦笑いする。縦横、自分がわかりやすいように好きな配置で部員の名前を書き、文章にならない必要最低限の文字を並べるメモの仕方。いつの間にか癖になっていた書き方だ。
「暗号みたいだな」
「確かに」
書き終わりました、と最後のルーズリーフを手渡す。監督はそれにも目を通して、先に見終わったものを溝口さんに手渡した。
「溝口くん、コピーしてきてくれないか」
「あ、はい」
監督が自主練に残っていた二軍の部員たちを呼んだ。
「堂島が今日のゲームを見た中での改善点を書き出した。それぞれカバーできるところもあるだろう。参考に全員分目を通しなさい。」
「はい！」
「わかんないことあったら聞いてくれな。」
溝口さんが走って戻り、二軍の部員にコピーを渡す。皆自分の名前を探しているようで、見つけては静かになり、読み終わると溜息を吐いていた。
「Aさん！いいですか？」
「はいはい、どした？」
コメントに対しての質問に受け答えしていると、あっという間に時間は過ぎた。
「はーいみんなー！今日はここまで！」
オーバーワーク禁止ねー、と音符が付いてそうなくらい明るく及川が言う。岩泉はその言葉に少し不機嫌だったが、何事もなく終わったことに安心して部室へ戻ることにした。
「今日は松川絶好調だったな。」
「汚名返上しなくちゃだからな」
「あー、ザルブロック？」
部室で汗を拭きながら3年だけで話す。
「いつも通りならザルなんて言わねぇよ。巧いし」
「それは光栄」
いつもならうるさい及川が静かだ。
「いっつもうるせぇけど、静かだと不気味だな」
「俺のこと言ってんの？！」
「お前以外いなくね？」
イジられてやっと騒ぎ始めた及川がチラッと岩泉を見る。なんとなくおかしい気はしていたが、岩泉も静かだ。
「岩泉どーした？」
「A、帰んべ」
「え、ちょ」
松川が俺の腕を引っ張る。
「あんま見せつけんな」
岩泉の口から吐かれた言葉の意味を理解できないまま部室を出た。
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作者名：シャバ僧 | 作成日時：2022年6月23日 21時
