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家の前まで着いた。喫茶店までの道やレストランまでの道で沢山話したからか、帰り道は特に話さなかった。沈黙も気にならず、お互い居心地がいいのか家の前で立ち止まりそれでも手を離さない。松川が俺の方を見る。
「また明日な」
「ん。最近急いで用意してばっかだから、30分くらいに来て。俺も急ぐ」
松川とゆっくり一緒に行きたい
そう続けると「ん」と言って俺の頭を撫でる。ゆっくりと髪に指を絡ませながら離そうとしない。
松川の手の温度がむず痒くて目を細めると、小さく笑われた。
「なんだよ」
「ワンコみたい」
「バカにしてんだろ」
不貞腐れて言えば頭の後ろと腰に手を回し、ゆっくり引き寄せられた。一気に詰まった距離。顔を上げ、松川の肩に顎を乗せる。耳の後ろあたりに鼻を擦り寄せ、香りを嗅ぐ。なんか、
「松川、えっろ」
「なにが？」
「いろいろ」
また笑われる。松川も俺の頭を抑え、耳の後ろの香りを嗅ぐ。スーッとゆっくり。
「ちょ、ヘンタイ」
「なんでだよ」
後頭部を撫でながら腰に回された手に少し力を込める。少しだけ顔を離すと、松川と目が合う。
「明日からは早めに迎えに来るな」
「頼んだ、じゃあな」
「ん」
離れようとした俺の頭をグッと引き寄せ、松川にキスされる。強くぶつかることなく、優しく触れた松川の唇に頭がチカチカする。やばい。
松川の胸板を柔く叩く。
「どした？」
「不意打ちはずるい」
「Aもしただろ」
言われて顔に熱が集まる。今日はなんだか松川の調子に引っ張られてばかりだ。
「……もっかい」
「ん」
小さく呟くと松川はまた優しくキスをした。
ゆっくり唇を離し、身体も解放される。二人で照れ笑いしながら「じゃあな」と言って俺は家に入った。
「ただいま」
声を掛けるが返答はない。リビングも暗いから部屋にいるのかと一度２階に上がる。
「ねーちゃんただいま」
部屋のドアをノックするが返答はない。連絡があったか確認すると、姉からの不在着信があった。かけ直す。
「あ、なぁ今どこ？」
《出なかったことまず謝んなさいよねー》
「ごめんて。で？どこ」
《さっきナンパされたんだよね》
姉貴の言葉に噴き出して笑う。通話口の向こうで姉が不機嫌に何か言っている。
「どんなやつ？」
《背高いイケメンって感じの高校生》
「犯罪じゃん。早く断って帰ってこい」
《あー違う違う。もう着くから》
姉が言うのと同時に玄関のドアが開く。
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
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作者名：シャバ僧 | 作成日時：2022年6月23日 21時
