41 ページ42
及川side
岩ちゃんに身体を支えてもらいながら歩く。いつもならすぐ着くはずの教室が遠い。
「あー、もうサイアク。調子良かったのになー」
「だからってAに八つ当たりしても仕方ねぇだろ」
「してませんー」
口ではそう言うものの、正直部室でのやりとりは八つ当たりだった。Aちゃんは心配してくれたし、手当てもしてくれた。一番最初に気が付いたのもAちゃんだし。
「にしてもよく気付いたよね」
「Aはそういうヤツだろ」
「それもそっか」
「及川！」
教室に入ろうとしたところで後ろから名前を呼ばれた。見ればまっつんとAちゃんがいる。
「どーしたのさ二人とも」
「これ」
一日中岩泉とくっついてられねぇだろ、と言いながら担いでいた松葉杖を俺に渡してきた。
「無理も我慢もするな。少しは頼れ」
「ごめん」
「気にすんな」
困ったように笑うAちゃんに罪悪感が芽生える。
「部室で、八つ当たりしてごめんね」
「それも気にすんなって。及川は大事な選手だ。恨まれても同じこと何回だってしてやっから」
じゃあな、と笑いながら教室へ戻っていくAちゃんを見送る。チラッと岩ちゃんを見ると優しい顔だった。
「岩ちゃんもそういう顔できるんだね」
「殴られてぇか」
「冗談冗談」
優しすぎるのも考えものなのかも、なんて思うけどそれを素でやるのがAちゃんだからみんな好きになる。
「あーあ、及川さんの方がイケメンなのになー」
「黙れ及川ぶん殴るぞ」
「岩ちゃんそれしか言えないの？」
「テメェ足治ったら覚えてろよ」
岩ちゃんこわーい、なんてふざけながら松葉杖を突いて教室に入る。みんな心配してくれたけど、きっと松葉杖がなければ誰も気が付かなかったんだろうなと思う。
机に荷物を置いて松葉杖を立て掛ける。岩ちゃんは授業の準備だけしてこっちに来た。
「それも、きっとAなりの考えがあるぞ」
「だろうね。一人でも多くの人が気を遣ってくれるように、とかそういう過保護だよ」
松葉杖を二人して見ながら小さく笑う。
怖いくらい見る目が優れていて、毎日毎朝体育館に入った瞬間からAちゃんは部員全員のコンディションを観察している。どんなに些細な変化でも見逃さない。
「Aちゃん、選手だったらどんな感じだったんだろうねー」
口を突いて出た言葉に、岩ちゃんが異常な程反応した。
「コーチや監督が褒めるくらい、いい選手だろうよ」
それは実際に見たような口振りだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シャバ僧(プロフ) - 優愛さん» ご要望ありがとうございます！負けず嫌いな男主なので、まだ未定ですが、一応別で男主受け松川夢ございます……よろしければ、どうぞ(宣伝) (2022年12月8日 23時) (
レス) id: 97accd6b89 (このIDを非表示/違反報告)
優愛(プロフ) - 主人公は受けがいい!! (2022年12月8日 21時) (レス) @page35 id: 5e22586db0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シャバ僧 | 作成日時：2022年6月14日 0時
