32 ページ33
岩泉side-2
「で?気になったヤツって誰?」
説明を聞いてる中で及川が小声で話し掛けてきた。
「いなくなった」
「は?昨日とメンバー一緒じゃん」
一人マネ候補だけど、と言いながらAを見た及川に内心で『だからいないんだ』とイラついたのを覚えている。
前日と同様にスパイク練をした後で休憩になった。
ルーズリーフを挟んだバインダーとタオル、スクイズを抱えて走り回るAを目で追いかける。一人一人と話しながら味の濃さを確認しているようだった。
(真面目だな)
Aは既に先輩らとも打ち解けているようだった。先輩からすると願ってもないマネ候補なのだろう。それが更に俺をイラつかせた。
「お疲れ。1年だよね?俺マネ候補の堂島A。よろしくな」
これドリンク、と俺にスクイズを手渡しながら言ったAは見るからにいいヤツだった。
「お前、バレー辞めんのか」
「あ、気付いてた?」
苦笑いしながらも味を聞いてくる。
「もう少し薄い方がいい。で、何でだ?」
「岩泉、は薄め、と。なんで、か。俺はすごいやつじゃないからさ。」
諦めちゃった、と言葉を濁す。その顔はちゃんと悔しそうだった。
「コーチも監督も、お前のこと褒めてたぞ」
「そっか。悪いことしたかな」
「自分で決めたんだろ」
まぁね、と困った顔で言うAの目は穏やかだ。
「同い年でもさ、段違いですげーヤツっているじゃん。牛島とか」
「……ああ」
「俺にとっては及川も同じなんだ」
あいつとポジション争いするのが怖い
そう言ったAは「じゃ」と他の部員の元へ走っていった。
「岩ちゃん、マネ候補と知り合い?」
「いや、今初めて話した」
「いい人っぽかったね」
ああ、とんでもなくいいヤツだった、と言えば何も知らない及川は「ふーん」とニコニコ笑って嬉しそうだった。
「Aがいいんなら、それでいいんだよ」
「相変わらず男前だね」
及川さんの方がイケメンだけどー、といつもの調子で騒ぐ及川を無視する。
Aのトスが打ちたかった。それは本心だが、俺たちが白鳥沢を負かす場に一緒にいるなら、それでいいとも思う。俺たちをサポートするAが喜ぶならそれでいいんだ。
「ちょっと岩ちゃん!無視しないで!」
「近所迷惑だっつってんだろクソ及川」
今度は拳骨を及川の頭に落とす。「イダ!!」と汚い声で呻いた。
「ま、俺は岩ちゃんがいいならもう言わないよ」
「ああ」
横で鼻歌を歌う及川もいいヤツだった。
158人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シャバ僧(プロフ) - 優愛さん» ご要望ありがとうございます!負けず嫌いな男主なので、まだ未定ですが、一応別で男主受け松川夢ございます……よろしければ、どうぞ(宣伝) (2022年12月8日 23時) (レス) id: 97accd6b89 (このIDを非表示/違反報告)
優愛(プロフ) - 主人公は受けがいい!! (2022年12月8日 21時) (レス) @page35 id: 5e22586db0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:シャバ僧 | 作成日時:2022年6月14日 0時