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金田一があまりに嬉しそうな顔をするものだから、俺と一静は笑ってしまった。
「頼もしいな」
「早く着替えて体育館来いよ」
「ハイ!」
ジャージに着替え終え、一静と部室を出て体育館へ向かう。背後から迫る足音と、ガシャガシャとカゴに入ったスクイズのぶつかる音。それらが俺と一静を追い抜いた時、小さな笑みが溢れた。
「どした」
「なんでもねぇよ」
「ふーん」
俺をチラリと見て、一静もふと笑う。外履きからバレーシューズに履き替えて、待ちくたびれていたのか、三人でストレッチをしているところへ混ざる。
「遅ーい」
「女子かよ」
「お前ら学祭何やんだ?」
「喫茶店。男装か女装かで揉めた」
「松、女装すんの?」
ケラケラと笑う花巻に、一静は少し眉間に皺を寄せる。三人と同じようにストレッチをしながら「しねぇよ」と否定した。
「及川たちは?何やんの」
「ホラーハウス!及川さんがドラキュラやるよ〜」
「驚いた女子の声に驚いてそう」
「俺は看板持って歩くの!」
昼に比べるとマシになった雰囲気は、1・2年が見て安心するくらいには明るい。特に及川は、次へとしっかり切り替えたのか今朝と全く違う。
「3年いるか?」
体育館に監督と溝口さんが来て、俺を含む3年連中に呼び掛ける。一応の確認だろうが、それぞれの意思を聞こうということらしい。
目の前に立った俺たちを見て、監督は表情を緩め息を吐いた。
「どうする、と聞くまでもないな」
「残ります。」
及川と岩泉が声を揃えて、力強く宣言する。それを聞いた監督と溝口さんは、嬉しそうな、呆れたような顔で笑った。
「俺らも残ります」
「俺も」
一静と花巻が言った後、志戸や湯田も続いた。それが俺は嬉しくて、つい笑ってしまった。
「堂島は?」
「決まってます。こいつらを支えさせてください」
笑顔のまま真っ直ぐに伝える。監督も溝口さんも表情を柔らかくし、真っ直ぐに俺たちを見た。
「勉強との両立もしっかりするんだぞ。他の先生方に迷惑かけられないからな」
「はい」
「よーし、ミーティングやるぞー」
溝口さんが1・2年に向けて声を張る。一部始終を見ていた彼らは察したのか顔を綻ばせた。
これ以上意見を交わせないという程続いたミーティングも、どんだけやる気だと溝口さんが怒鳴った自主練も終わった。
「汗冷やすなよー」
「タオルです!」
自主練の筈が部員全員が残ったことで、通常練習となんら変わりなかった。
時間がない。俺に何が出来るだろう。
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シャバ僧(プロフ) - しおさん» 原作にない流れを書くこともあり、まだ展開が半端ですが、またペースを戻せるように頑張ります!こんな長い小説をここまで読んでくださりありがとうございます! (2022年11月7日 8時) (レス) id: 97accd6b89 (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - シャバ僧さん» そうだったんですね...!いつもお疲れ様です泣覚えて頂けて嬉しいです!!楽しみにしてます! (2022年11月7日 0時) (レス) @page26 id: 8068b429a0 (このIDを非表示/違反報告)
シャバ僧(プロフ) - しおさん» こちらこそありがとうございます!!烏滸がましいですが、スランプ気味で筆が乗らなかったため、更新が遅くなってしまいました……またコメントいただけて嬉しいです!更新頑張ります! (2022年11月4日 21時) (レス) id: 97accd6b89 (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - 5人のわちゃわちゃかわいいですありがとうございます...!!! (2022年11月4日 21時) (レス) @page26 id: 8068b429a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シャバ僧 | 作成日時:2022年10月6日 12時