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街灯が照らす道を一静と辿りながら、家まで歩く。
きっと言うんだろう、と思っていると、

「あ、A」

「なに?」

案の定、一静が繋いでいた手を軽く揺すって俺を呼ぶ。それが合図だったのか、立ち止まって俺を見た。

「寄ってかね?」

目の前にはテスト勉強で来たきりの喫茶店。インハイも終わり、束の間の休息ともいえる時期はなかなかない。引退したらまた別だが、それは一番早くても秋の話だ。

「いいね。そうすっか」

カランカラン、と古めかしいドアチャイムが鳴る。

「いらっしゃい」

「こんばんは」

二人ともドアを潜り、店内に足を踏み入れる。以前来た時より遅い時間なのも相まって、一段と落ち着いた雰囲気だ。
来た時の定位置となりつつあるテーブル席に掛け、荷物を置く。一静はここの定食が気に入っているらしい。

「俺生姜焼き」

「ガッツリ食うのね」

「Aは?どーすんの?」

「俺はカフェモカとサンドウィッチかな」

お願いします、と一静が店主に呼び掛ける。店の奥からコツコツと革靴が床にぶつかる音を響かせながら、店主が俺たちの席まで来る。

「いつもありがとう。ご注文は?」

「生姜焼き定食の、ご飯大盛りひとつと」

「カフェモカとサンドウィッチで」

「定食の飲み物は何がいいかな?」

俺と一静を交互に見ながら注文をメモに書いている。少し悩んだ後、一静は「カフェラテで」と付け加えた。

「かしこまりました。少し待っててね」

「お願いします」

パタン、とメニューを閉じ、一静はエナメルバッグの中を漁り始めた。

「課題やんの?」

「やらねぇと間に合わねぇだろ」

「そうでもなくね?俺が家事してる間にやりゃいいじゃん」

テーブルに肘を突き、一静の言葉に首を傾げる。だが、そんなことすら無視して、一静は課題のプリントを開いた。

「Aは効率いいからな」

「効率良けりゃなんでもいーし」

「効率厨め」

「効率厨を悪のように言うな」

課題を進める一静を眺めながら、問題文を目で追って頭の中で解く。計算に詰まりそうな時はスマホの電卓を使っていると、一静が俺をチラリと見た。

「なに?」

「メール?」

「いや、計算してた」

「先に飲み物いいかな?」

店主がカフェモカとカフェラテの入ったトレーを片手に、俺と一静のいる席まで来た。一静は課題を少し窓側へ寄せ、それを待つ。

「カフェモカと、カフェラテね」

「ありがとうございます」

「食事はもう少し待ってね」

店主は厨房へと戻って行った。

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シャバ僧(プロフ) - しおさん» 原作にない流れを書くこともあり、まだ展開が半端ですが、またペースを戻せるように頑張ります!こんな長い小説をここまで読んでくださりありがとうございます! (2022年11月7日 8時) (レス) id: 97accd6b89 (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - シャバ僧さん» そうだったんですね...!いつもお疲れ様です泣覚えて頂けて嬉しいです!!楽しみにしてます! (2022年11月7日 0時) (レス) @page26 id: 8068b429a0 (このIDを非表示/違反報告)
シャバ僧(プロフ) - しおさん» こちらこそありがとうございます!!烏滸がましいですが、スランプ気味で筆が乗らなかったため、更新が遅くなってしまいました……またコメントいただけて嬉しいです!更新頑張ります! (2022年11月4日 21時) (レス) id: 97accd6b89 (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - 5人のわちゃわちゃかわいいですありがとうございます...!!! (2022年11月4日 21時) (レス) @page26 id: 8068b429a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シャバ僧 | 作成日時:2022年10月6日 12時

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