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アイスの蓋を開けて、またひと呼吸置く。まだ固そうなアイスの表面を見た。持ってきていたスプーンを差し出すと、受け取ってアイスを掬い口に入れた。
「うまい？」
「うまい」
少しずつ明るくなる表情と反対に、部屋はどんどん暗くなる。電気を点けようと立ち上がったタイミングで、湯張りが終わったことを知らせるアラームが鳴った。
「入る？」
「すぐ食い終わるから待ってて」
「ん」
一静と交換した、もう外から触っても分かるくらいに柔らかくなったアイスを眺める。すぐだ、と思って蓋を開けた。
「食うの？」
「え、うん」
ギョッとした顔で俺を見て、でもどうしたものかと考え込む。
「半分やる」
「いや、いいよ。うまい方食いな」
「じゃあ貸して」
「ちょ、」
スプーンでドロドロに溶けたアイスを半分掬い、自分の持っていたカップに移す。残った溶けたアイスを手元に残し、半分半分で入ったカップを俺に渡してきた。
「これならいいでしょ」
「ありがと」
「溶かしちまったの俺だから」
苦笑いして、溶けていても冷たいそれを一静は口にする。「あっま」と言いながら、でも笑っているからか、それを見て気持ちが落ち着いていくのが分かった。
「ゴチソーさん」
「ん、風呂行くか」
空になったアイスのカップをゴミ箱へ入れる。一静が先に立ち上がり、俺に手を差し出した。素直に掴むと引き上げられる。
「少しは元気になったか？」
「ん、ありがとな」
立ち上がった俺をそのまま抱き締めて、深く息を吸い込む一静はいつも通りだ。
「はい、風呂風呂」
「ん」
家の中なのにも関わらず、俺の手を握ったまま歩く。子どもの頃を思い出した。
一静に髪を乾かされながら、ただボーッとする。
柔く丁寧に髪を梳く指先が心地良い。少しだけ抱き込まれているような体勢が落ち着く。はらり、と顔に掛かった髪をそっと退ける手が愛おしい。
「ん、いいかな」
ドライヤーが止まって、余分な熱を取るように一静の指先が俺の髪を揺らす。その手が離れてから指を通す。
「ん、オッケー」
「寝れそうか？」
「多分」
脱衣所から二人で出て、寝室に入る。やりたいことは山ほどあった筈なのに、何一つできていない。
「昨日さ」
一静が話し始めて、何だろうと思いながら顔を見る。
「目ぇ覚めたらAがいなくて、焦った。今まで普通だったけど、ふたりで暮らしてからはなかったから、前にAをひとりにしたの思い出した」
ごめんな、と優しく抱き込まれた。
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シャバ僧(プロフ) - ひなさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！頑張って完結まで書き切りますので、今後ともよろしくお願い致します！ (2022年9月9日 17時) (
レス) id: 97accd6b89 (このIDを非表示/違反報告)
ひな - コメント失礼します。この作品すごく好きです！画像もかっこいいですね。応援してます！ (2022年9月9日 0時) (レス) id: c76bd02e2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シャバ僧 | 作成日時：2022年9月2日 21時
