270 ページ23
烏野のコーチも察したのか、コート外から指導に当たらない範囲の声掛けをする。
「スピードの呪縛。」
監督が徐に口を開いた。
「ブロックから逃れたい一心で、つい"打ち易さ"よりも"速さ"を優先してしまう」
中学時代の影山を思い出しているのか、その口調は重々しい。
「無意識に……ほんの少しずつ。でもそれは、徐々に大きなズレになっていく。……というのをわかっていて、堂島は言ったんだろう」
「そうですね。ブロッカーからのプレッシャー、ぶっちゃけ俺も一番嫌だったんで。」
去年、及川と岩泉に連れられて中総体を見に行った。ふたりが言うに『後輩が凄いことになってるらしい』と。それを聞いて興味が湧いた。
実際の試合を見て、こいつのことか、と思った。噂には聞いていた『コート上の王様』。目で見て、王様、と言うのはいい意味ではないとすぐにわかった。
確かに巧い。が、ひとりで足掻いていた。ひとり、というより、独りだった。実際に同級生でチームメイトだった国見と金田一は、今も影山をよく思っていない。
今ここにいるのも、どこか中学時代の影山に見えてしまう。
国見がサーブを前に落とした。ギリギリで烏野はそれを上げたが、ネットを超える。
「押し込め影山！」
澤村の声が響いた。
ネット際で及川と影山がボールを押し合い、及川がわざと力を抜く。影山はそこを見計らって押し込んだが、影山の手が離れる寸前で及川が押し返した。ほんの一瞬の攻防。
影山は焦りなのか、靴底が床に突っ掛かりその場に倒れてしまった。
立ち上がり、ポジションへ戻る。
国見のサーブがレシーブされ、影山の頭上に返った。センターへ上がるが、メガネくんの手にボールは当たらない。
「アサヒさんナイスフォロー！」
長いホイッスルが鳴った。
「ここまでが、お前の想定内か？」
「ですね。ただこれが裏目に出る場合ももちろん」
影山の代わりは、菅原だった。ずっと
コートに入って早々、菅原はチームメイト一人一人とコミュニケーションを取っていた。そしてニコッと笑うと、烏野の空気も和む。
及川が岩泉に何か耳打ちした。
ホイッスルが鳴って試合が再開される。
花巻のスパイクが澤村によって拾われた。菅原が坊主くんに上げ、ストレートへ打ち込まれる。渡が拾った。
「岩ちゃん！」
岩泉が打つ直前、菅原とメガネくんが位置をスイッチした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 132人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シャバ僧(プロフ) - ひなさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます！頑張って完結まで書き切りますので、今後ともよろしくお願い致します！ (2022年9月9日 17時) (
レス) id: 97accd6b89 (このIDを非表示/違反報告)
ひな - コメント失礼します。この作品すごく好きです！画像もかっこいいですね。応援してます！ (2022年9月9日 0時) (レス) id: c76bd02e2f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シャバ僧 | 作成日時：2022年9月2日 21時
