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「…ほら、早く部活行ってこい!」
「あ、いけね!行くぞ相葉!」
「あ、あっうん!」
ぱたぱたと急いで体育館へ向かう。
そんなふたりに、すれ違いざま
「おーおー走るなよー」と声をかける人。
そのままゆっくりと、こちらへ近づいてくる気配。
「…またその絵、見てんの。」
「うん。」
この絵を描いてる彼に、俺は惚れたからね。
その人は、いまはもう俺の隣りにはいないけど。
「なんか風の噂で、吹奏楽部は土日、先生の私用で休みだって聞いたんだけど?」
「…ん、行ってくるよ。」
「…そっか?」
「うん。」
「怒られるだろーなぁ、俺。」
「大丈夫だよ、そんな人じゃないよ。
俺からも、言っておくし。」
「ん。…会えると、いーね。」
「…うん。」
「思ってるからね、ほんとに。」
「うん、ありがとな。」
そのあとはお互い何も言わず、
絵を眺めたまま、時間は過ぎていった。
.
次の日、俺は
自分の家からは遠く離れた場所まで
遥々、来ていた。
彼の職場まで行ったが、不在で。
彼が最近足繁く通ってる場所がある、という
有力情報を得た。
その場所を、聞いて
そこにいるかもしれない
そこに、いてほしい
もし、いてくれたら
もしかしたら…
そんな期待をもって、その場所へ向かった。
教えられた場所へ向かうと
大きな、桜の木の下
遠くからでもすぐわかる
会いたくて会いたくて、たまらなかったその人が
スケッチブック片手に、
少し切ない表情を浮かべていた。
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作者名:紗倉櫻 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/sakurasakura_21
作成日時:2016年12月11日 0時