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「智くん…俺ね?」



抱きしめた身体から、彼の鼓動が伝わる。

どくん、どくんと
いま、どんなきもちになってる?




「智くんに初めて抱かれたとき、
同じ気持ちを共有できる人が見つかった、ってちょっと思ったんだ。」

「…うん」

「だけどね、そんなの違ったよね。
フラれた俺と、大切な人を亡くした智くんとじゃね、
全然違うし、同じ気持ちなんかじゃないし…」



腕に少しだけ、力をこめる。
伝わるかな、伝わりますように。




「あの人のことは忘れてよ、なんて
口が裂けても言えないし
忘れなくてもいいよ、とも
俺が言う権利ないけど

それでも、もし
あのとき言ってくれた言葉がほんとうだったら
もし、本当に思ってくれたなら
なかったことに、しないでよ…」

「翔、く…」

「大切に、想ったままでいいよ。彼女のこと。
それでも俺を好きだって思ってくれたなら
自分で否定なんて、しないで?」

「…」

「なかったことになんて、しないで」

「…」

「俺だって、この先もずっと
智くんを想ってる保証なんてないけど
だから、ずっと好きだよ、なんて
ずっと一緒にいようね、なんて言わないけど」

「…うん」

「今は俺、智くんと一緒にいたいよ
智くん以外、なんもいらないよ
そばに、いてよ…」



ああ、泣きそう。

かっこわりい。





「…」

「それとも…
…もう、智くんは
俺のこと、好きじゃなくなった?」



あれから、1年も経った。
気持ちが変わっていたって、不思議じゃない。

人の、気持ちなんて…




「…おれ」

「…」

「ずっと、忘れられなかったんだ
アイツがいなくなったあの日から、
もう1人で生きていこう、って決めたのに
それなのに…翔くんが…
ずっと…会いたくて…」

「智くん」

「うん?」

「もう、俺のそばからいなくなんないで」

「…」

「拒否権、ないから」

「…ふふ。ないんだ」



そんな言葉聞いて、
もう、離すわけ、ないでしょ?





「…いいのかな」

「なにが?」

「先生が、ルール、破ったりして」

「あのね」

「なに?」

「ルールは、破るためにあるんだよ?」





「…教師失格」

「結構です」




だって俺は今、腕の中でクスクスと笑う
一番欲しいものを、
手に入れた、から。

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作者名:紗倉櫻 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/sakurasakura_21  
作成日時:2016年12月11日 0時

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