Jealousy－今誰と何しているの？（ars×ars） (ページ17)

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「あのひとね。」

「…うん。」

きっと、大野さんのことだろう。

「いつも、みんなより何時間も前に来て、ああやって練習してんのよ。」

「そう…なんだ。」

「稽古終わった後も、仕事とか予定がない限り居残ってんの。」

「しらなかった…。」

「だろうね、隠してるから。
今回は主役だから、特に気合入ってんだろうなあ。
ま、いつもあんな感じだけど。」

「そうなの？」

「あの人、自主練の鬼だよ。
舞台のことばっか考えてる。
バカだよ、仕事バカ。
場所の許可も自分で取ってんの。信じらんないよ。」

見えないよね、と二宮が笑う。

「…見えないなあ。」

「ま、息抜きもうまいけどね。」

「え？」

「うまいっつーか、下手っつーか…」

「何？」

「あ、いや…なんでもない。」

二宮が微笑みながら、首を緩く左右に振る。

「なんだよ？」

気になって問い詰めようとしたけど、電話のバイブが鳴って

「あ、ワリィ、電話だ。
大野さんもう終わると思うから、先行ってて。」

「あ…うん。」

「ゴチね！」

そう言ってスポドリを少し高く掲げ、
二宮が電話に出たので
俺は稽古場へ戻ることにした。

戻ると、大野さんはまだひとりで練習をしていた。

あまり見たら悪いかな、と思いつつも
ドアを少し開けて、見てしまう。

稽古中は、自分のことでいっぱいいっぱいで
見たい気持ちはあっても、ずっと見ていることはできない。

だから、大野さんの稽古をこんなにじっくり、見るのは初めてで…。

天才だ、って思ってた。

この人の才能は、生まれながらにして備わっていたものが大きくて

だから俺なんかがどんなに頑張っても、
この人には敵わない、そう、思ってた。

でも違った。
この人の才能は、生まれ持ったものもあるんだろうけど
きっとそれ以上の努力によって形成されたものだ。

自分がとても、情けなくて。

そんな暗い気持ちでいながらも、
大野さんの演技に、引き込まれていて。

余計に、大野さんから目が離せなくなっていた。