Jealousy－今誰と何しているの？（ars×ars） (ページ15)

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誰のしるしなの？（M×O）ページ15

「今日は以上にしようか。お疲れ！」

その声で、今日の稽古は終了した。

念願だったミュージカル俳優という職業で、
飯を食えるようになってから5年程経ったけれど、
まだまだ先輩達には到底敵わない。

今回参加する舞台にも尊敬する先輩はたくさんいて。

その中でも主役の人は、歳こそ3つしか俺と変わらないが
抜群の歌唱力にダンス、
芸術的なセンスもずば抜けていて。

「才能人」って、こういう人のことだな…と思う。

天性の才能、っていうか。

この人がセリフを言うと、この味気ない稽古場も一瞬にして舞台と化す。

ピン、と空気が張って、しっかりしないと飲み込まれてしまいそうになる。

真剣な眼差しで見つめられると、こちらも芝居をしているはずなのに息をし損ねそうになるほど。

同性ながら…いつも見惚れる。

俺とはタイプが違うように思っていたけど、
それでもこの人へは他の先輩たちとは違う
強い憧れが俺の中であった。

「お疲れ様です！」

「おぉ、お疲れ！」

なにか、盗みたい。

稽古中はもちろんだけれど、この人に近づくことで
稽古ではわからなかったこの人の魅力が分かるかもしれない。

それを、仕事に生かせるかもしれない。

そう思い、稽古以外の時間もなるべく話しかけるようにしている。

「今日もよかったよ、松本。」

「ほんとですか、ありがとうございます！
…でも、まだまだです。大野さんみたいに、全然できなくて…。」

「俺みたいになんて、する必要ないよ。」

「そんな…」

「カッコイイもん、松本。
俺、それこそあんな風にはできない。」

穏やかに笑って言う。

「なに言ってるんですか、大野さんこそあんなカッコイイのに！」

言ってすぐ、ヤバイ、気持ち悪いかな、こんなの。って焦った。

でも彼は

「ほんと？あんがと！嬉しい、ふふ。」

そう言って、ふにゃあっと笑った。

この笑顔も、ズルい。

芝居中はあんな緊迫した空気を作るのに、
普段はこんな、穏やかに笑う。

怒ったり、誰かに冷たくしているのなんて、見たことがなかった。

「って、なに良い歳した男ふたりが褒め合ってんだろうな。」

ちょっと照れくさそうに笑う。

「ですね、はは。」

そんな彼につられて俺も笑った。