4Fr�� ページ28
「Aも……、向こうで、何かあったんじゃないのか」
探るような、案ずるような目を向ける真琴を、直視することができず、
「……何もないよ」
と、ただ、そう言うことが精一杯だった。
「A……」
真琴の顔が、何か言いたげに歪められる。私がそんな顔をさせてしまっているのかと、意味の無い罪悪感に襲われる。
「そんな顔しないでよ。本当に、何もないから」
努めて明るく言ったつもりだ。だからこれ以上、踏み込まないで欲しい。察しのいい真琴なら、分かってくれるだろう。
しかし私の願望は届かず、真琴はぐっと拳に力を込め、力強い瞳で私を見つめる。
「嘘だ」
普段の優しげな瞳と違い、射抜くような鋭い瞳。その真っ直ぐさに、心が揺らぎそうになる。
「話したくないなら、無理に話さなくてもいい。けど、俺に出来ることがあるなら、力になりたいんだ」
真琴らしい言い方だと思った。相手を追い詰めないような、優しさのある物言い。
そこで真琴は、ふっと力を緩め、いつもの優しい表情で私を見た。
「……きっとハルも、同じ気持ちだと思う」
二人はどこまでも優しい。ハルも、無関心そうに見えて暖かい心を持っている。その静かな温かさに触れると、穏やかな気持ちになるのだ。
けれど今の私は、二人の優しさを踏みにじっているのだろう。
何も言えなくなった私に、優しい声で真琴は言葉を続ける。
「A、昔言ってただろ？泳ぎ続けていれば、またどこかで会えるって」
その言葉の意味を理解した途端、心が冷えていくのが分かる。スーッと一気に冷えていく感覚。
「もう一度、凛とも会えたんだ。だからこうして皆で……」
「そんなこと言ったっけ」
今のは誰の声なんだと、一瞬戸惑ってしまう。自分からこんなにも冷えた声が出せるんだと、少し驚いた。
「A…？」
急に様子が変わった私を不審に思ったのか、真琴が戸惑ったように声をかけてくる。真琴と目を合わせることなく、私は窓の外をみる。けれど、目に入るのは景色ではなく、ガラスに映る自分の姿。
──私は今、どんな顔をしているのだろうか。
「そんな昔のこと、もう忘れちゃった」
真琴が息を飲む気配を感じる。そんな真琴の顔を見たくなくて、私は腰を上げた。
「じゃあ、もう帰るね。ご飯、ご馳走様。ハルにもそう言っておいて」
冷えた心を抱えながら、私は来た道を戻った。行きよりも荷物が少なくなったはずなのに、何故か重い足を引きずりながら。
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ミノ(プロフ) - ちょこれーとさん» 嬉しいコメントをありがとうございます！とっても励みになります！私も遙が好きなんです！これからも気長にお付き合いいただければと思います^^* (2021年6月19日 22時) (
レス) id: 39ed912905 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - この小説めっちゃ好きです！Free！の映画も楽しみですね。笑 ちなみに、私はハルちゃんと郁弥推しです！これからも作者様のペースで頑張ってください！応援してます(*'▽') (2021年6月19日 22時) (レス) id: 64be1a2e2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミノ | 作成日時：2021年5月17日 21時
