世界で一番【あほの坂田】

世界で33 ページ36

A サイド

志麻に教えてもらった場所まで全力疾走する。

病み上がりだというのに我ながら化け物みたいだと思ってしまう。

坂田は無事だろうか。

泣いていないだろうか。

坂田は昔からよく泣くし

面倒事ばっかりよこすし

うざったいほどの笑顔を向けるし

誰にでも好かれる。

でも、そのぶん恨みを買うことだってある。

毒はもられるし

攫われるし

変な取引に巻き込まれるし

処理をするのはいつも私。

本人が何を思ってるのかまったくわからなかった。

いや、わかりたくなかった。

私の知らない坂田に触れるのは少しだけ怖かったから。

何でも知っているつもり。

でもそれは私の思い込みに過ぎない。

知らないことだってたくさんある。

坂田の全部を知っているわけじゃない。

だから怖い。

知らない坂田を見るのが私は怖い。

だから、夢の中の坂田は怖かった。

ほんとうにそう思われているんじゃないか。

そんな気がして、でもやっぱり坂田はそんなことを言うやつじゃないと、

どこかで信じている自分もいる。

私はいつの間にか坂田に気付かされているらしい。

ほんと、厄介なやつだ。

もう少しで目的につく、というところでとまる。

『会いたかったよ』

そういうと彼は顔を歪ませた。

「俺は会いたくなかったよ」

彼、うらたはそう言って悲しそうに笑った。

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