夏の終わりの空模様 afterstory (ページ3)

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玉座の間には王様、アイル、あるにあ、ユジナの四人しかいない。

「馬子にも衣装だな。少しはマシに見える」

相変わらずの皮肉。だがあるにあと王様の間柄は、表面上は何の変化もないが、少しずつ良くなっているのはアイルとユジナも薄々気づいている。

「今日は何の用? さっさと帰りたいんだけど」

ムスッとした表情のあるにあ。なぜ不機嫌なのかは言わなくてもわかるだろう。

「アイル」
「はい」
「お前に王位を譲ろうと思う」

しばらく沈黙が続く。あるにあがアイルの方を横目で見ると、ありえないというように目を開き、口を半開きにして直立不動になっている。

「もう一度言うぞ。アイル、お前に王位を譲ろうと思う」

アイルはあるにあとユジナを交互にみたあと、戸惑いを隠せない様子で言った。

「わ、私、ですか……? 私はあるにあの方が適任だと……」
「え!? 俺!?」
「リーダーシップもあるし、人見知りな僕よりよっぽどいいと思うけど。ユジナはどう思う?」
「ぼ、僕は……」

ユジナは言い淀む。

「わ、わかりません」

わからない。その言葉にどういう意味があるのかと、３人はユジナの方を見る。

「父上の言う通り、兄上が王になるんだと思っていました。ですが、その……兄様の事は全然知りませんし、どういう人かも、少ししかわかりません。なので、二人を比べる事はできませんし、どちらが王に相応しいかなんて……」
「なぁユジナ」

俯き加減のユジナをあるにあが呼ぶ。

「ユジナが王になるっていう選択肢はないの?」
「え? あ、えっと……」

あるにあの問いに対してユジナは少し考えた後、真っ直ぐにあるにあの目を見て言った。

「僕は相応しくないと思います。お二人よりもまだまだ未熟ですし、勉強する事ばかりです。なので僕は兄上や兄様のサポートしたいと思っています」

現在14歳のユジナ。人より大人びているのは明らかにわかる。普通なら思春期やら反抗期やらで不安定な同年代も多いというのに、しっかりと自分の意見を持ち、ここで言ってのけた。

「やっぱり、僕はあるにあの方がいいと思う。王宮にいた僕よりも国民の事を分かってるし、周りからの信頼も厚い」
「え～?」
「......じゃあ、一度試す、というのはどうだ? それぞれに期間を設けてそれぞれが一度王の仕事をする。良い働き、または適性を見て判断しようではないか」

お互い譲り合っている2人を見てため息を吐きながら言った。
あるにあとアイルはそれで良いというようにそれぞれ返事をした。