甘いチョコレート。 ページ43
ずるずると玄関先でドアに背を預けて蹲る。
彼が言った言葉をもう一度、噛み砕いた。
｢Aちゃん、卒業式の時にさ。ちょっとだけ、残ってもらってもいい？｣
少し、緊張したような。そんな風に見えた彼は、私の目を見て真っ直ぐに言葉を紡いだ。
正直、心臓が跳ねて落ち着かない。
｢…ずるい｣
返事は、変じゃなかっただろうか。
好きだという感情が、こんなにも苦しくて暖かいなんて知らなかった。
私は、うつくんが好き。どうしようもなく好きなんだ。
｢明日、入試なのに…。どうしよう｣
彼が私に言ったのは、卒業式後に残って欲しいという旨。これが、何を意味するのかをすぐに理解してしまう。
私が、去年彼に頼み込んだこの不思議な関係が終わることを意味しているんだろう。
でも私は、終わらせたくないと思ってしまう。
うつくんには、私だけを見てほしい。
私のことを、可愛いねって素敵だねってそう言ってほしい。
彼とお付き合いをしてから、随分と変わってしまったように感じる。でもきっと、これは良い変化なのではないだろうか。
人を愛することで、視野が狭まるなんてこともよく聞くけれど。私は違うと思う。
隣に立ってくれるからこそ、知らないことを知ってお互いに良い刺激になる。
自分だけの視野では、考えられなかったことが考えられるようになるのが、愛なんじゃないかと私は考えている。
たくさん、たくさん考えてくれたであろう彼の言葉。卒業式に、何を言われても私は彼を否定しない。最後には、絶対に笑顔で。
｢…ふぅ、よし。明日、頑張らなきゃ。｣
ゆっくりと起き上がって、誰もいない家に声をかける。
｢…ただいま！｣
明日の入試、絶対にいい結果にしてみせる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 271人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちぇる(プロフ) - 白ごまさん» コメントありがとうございます！ (2021年4月19日 19時) (
レス) id: 2136318bfb (このIDを非表示/違反報告)
白ごま(プロフ) - 甘酸っぱい両片思いでもうずっとキュンキュンしてました。完結おめでとうございます！ (2021年4月18日 4時) (レス) id: bba1a3ae28 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇる(プロフ) - �世気�» コメントありがとうございます！ (2021年3月12日 20時) (レス) id: 2136318bfb (このIDを非表示/違反報告)
�� - キュンキュンする（真顔） (2021年3月12日 18時) (レス) id: 86f4624805 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇる(プロフ) - メロンパンさん» コメントありがとうございます！ (2020年12月1日 19時) (レス) id: 2136318bfb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
