○走り抜ける。 ページ38
思わず呼んでしまった名前。
彼の服の裾へ伸びた自分の腕。
もう、引き返せない。
「せん、ぱい…?」
彼はゆっくりと振り返り、月が反射するタンザナイトのような瞳で私の姿を捉える。
その、炎のように燃える瞳に耐えきれず逸らす。
零れた言葉は帰ってこない。
「わ、たし。まだ、帰りたくない…」
ああ、言ってしまった。
ほんまにあかん。私ひどいな。
ショッピの思いを知った上で、こんなん言うとか。
ずるい、やろうなぁ。
ショッピの顔が見れなくて、伸びる影をひたすら見ていた。
すると、彼は溺れそうなほど優しい声を出した。
「ねえ、先輩。俺と悪いことしましょうか。」
理解する前に取られた手は、家の方向とは逆を向いていた。
私、今。手を引かれて走ってるんや。
涼しいといえど、季節は夏。
動く足のおかげで汗が滲む。
私の手を引くショッピは、黙ったまま。
ただ、前を見て走る。
掴まれた右手は、二人分の熱が溶けて今にも崩れてしまいそうだった。
夜の町を、高校生二人が駆け抜ける。
ショッピが向かう先は分からないけど、私のための行動なんやろうなぁ。
…帰りたくない。
本心だった。
まだ、私は。
-------------
短くてすみません。
全然関係ないですけど、先日誕生日でした。
1142人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくら - 下に同じく。説明文で面白いと見た。そして読んで更に面白いと思った。後輩くん好きなんでほんとこの小説神ってます!ありがとうございます!! (2022年9月20日 17時) (レス) id: 1fc21789e4 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇる(プロフ) - える@脅威さんが好きです!さん» 随分古い作品なのにコメントありがとうございます!笑 (2022年3月11日 10時) (レス) id: f71e4746a6 (このIDを非表示/違反報告)
える@脅威さんが好きです! - 「リアル後輩がむっつりだったので書きます。ごめんね。」で私は面白いと確信を得た。 (2022年3月11日 1時) (レス) id: 2c1cc6224f (このIDを非表示/違反報告)
ちぇる(プロフ) - RURUさん» ありがとうございます! (2021年1月20日 8時) (レス) id: 2136318bfb (このIDを非表示/違反報告)
RURU - 好k(昇天) (2021年1月20日 6時) (レス) id: cf91128782 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ