【d!】何か、ご不満でも？

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あれから特に何かに巻き込まれたり、嫌がらせを受けたりという事もなく夏季休暇に突入した。
学園外では何にも縛られることなく、自由でいられる。まぁ、申し訳程度の自由なんだけど。

『夏季休暇が終わるまであと何日あると思ってるの？』

gr｢んー、あと四十日くらいか？｣

『流石に家に帰りたいんだけど…』

gr｢今年でこうやって学生でいられるのも最後なんだ。一緒にいたい。…だめか？｣

顔がいいことを自覚している男が、似合いもしない上目遣いで見つめてくる。顔がいいから許されるんだから。私の扱い方が分かっているのも腹立たしい。

『私が断れない事を知ってて、わざとそういう事を言うんでしょう？』

グルッペンは何も言わずただにこりと笑うだけだ。
…本当にムカつくわねこの王子様は。
でも、彼のおかげで家にいる時には出来ないような夏季休暇を過ごせているわけだし。そこは感謝しないといけないわ。

『…話は変わるけど、そっちは順調そうなの？』

gr｢ん、あぁ。あの件だな？勿論順調だ。心配しなくていい。｣

『いえ、別に不安というわけではないけれど…。皆に迷惑をかけてしまって申し訳ないのよ』

gr｢気にするな。あいつら、Aのことを気に入ってるから快く承諾してくれたぞ。｣

そうは言っても、この我儘な王子様に逆らおうとする人間なんてほとんどいないのだから承諾せざるを得ないだろうに。
ほら、あなたの後ろに立ってるトントンの眉間にしわが寄ってるわ。まるで東の国のお面みたいな顔になってる。

『トントンもありがとうね。本当に助かるわ』

tn｢…いや、俺の仕事はあくまでこの人の護衛やし。この人が大切に思う人の護衛もして当然の事やから。気にせんといてください｣

gr｢ほんまよく出来た騎士様やわ〜｣

tn｢どの口が言うとんねんいつも尻拭いさせやがってほんまにどつくぞ｣

主従関係のはずなのに、年相応の青年のような口喧嘩をする二人。一方的にトントンの愚痴が放たれているだけなんだけど。

本当に、彼らには助けられてばかりで情けなくなる。私が巻き込んでしまったのに。
一番悪いのはあのご令嬢だけれども。それでも、だ。

絶対にこの幸せを守ってみせる。見てなさい。

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