雲 ページ8
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｢鳥井くん〜、おはよう｣
｢お、今日はもうすぐ終わりそうやね｣
｢今日も暑いなぁ〜、教室は涼しくていいや｣
あれからというもの、彼女は毎日同じ時間に教室を訪れるようになった。最初こそ、荷物を取りに来るためだと思っていたけれど、どうやら違うらしい。
｢な、なぁ…。なんで、制服なん、すか｣
｢…ほら、焼けちゃうからさ｣
｢でも、月曜日までは、ユニフォームやったじゃないすか｣
｢汗かいてるし上着てへんと寒いから｣
｢…｣
頑なに、言ってくれない。
何となく感じていた違和感、なのだろうか。
彼女がユニフォームではなく制服で来るようになってから、彼女は少し長い靴下を履いてくるようになった。そんなことまで覚えてるのきもいって？うっさいわ。
それに、痛々しくガーゼや絆創膏が貼られた腕。
何かがあったことは明らかだった。
そんなに俺は、頼りないのだろうか。
そりゃあもちろん最近になってやっと普通に話せるくらいになったのだから、簡単に自分の弱みなど話せるわけがない。わかってる、わかってるけど。
｢なぁ、俺はそんなに頼りないん、すか｣
｢え…｣
｢…歩き方、なんか不格好やし。腕も怪我してるし、なんかあったんやろ…？｣
｢…鳥井くんには、関係ない、から｣
｢俺ら、友達とちゃうん。そう言うたんは青木さんや。友達にも言えんことなん？それとも、俺やから言えへんの？｣
｢ちが…！｣
｢なら、言うてや。めっちゃ苦しいって顔、しとる｣
彼女は、制服を着てくるようになってから窓を見る度に悲しそうな悔しそうな。少なくとも楽しいという感情ではない顔をする。ただ青い空を見て。
きっと、彼女は空なんか見ていない。
視線は空にあっても、彼女の心は空になんて向いていなかった。
彼女は、彼女自身を見ていたんじゃないだろうか。
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