雲 ページ7
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｢あ、でも！鳥井くんあんまり女の子と一緒におるとこ見いひんし、嫌やったらもう来んから！｣
俺の事を気遣ってか、彼女は焦ったように胸の前で手を振り距離をとる。
嫌なわけ、ないやん。
｢嫌じゃ、ないっすよ、別に｣
女子が苦手なのは否定しない。だって、男友達おったらそれでええって思っとるし。
やけど、青木さんは他の女子とは違う、気がするから。
彼女と目を合わせることは出来ないまま、それでもしっかりと答える。さっきみたいに泣かれたら適わんし。
すると、どこか嬉しそうに｢そっか｣とだけ呟いた。
本当に嬉しそうなのかは分からないけどそうだと信じたいし。そうだと嬉しい。何でかは分からんけど。
｢あ、それなら…｣
次に聞こえた言葉は、何やら彼女からの提案らしく首を傾げた。
｢鳥井くんが、良かったらやねんけど。毎日、ちょっとだけでいいから来てもいい？｣
｢…はぁ。え、来てもいいって…？｣
すかさず頷きそうになるが、疑問が浮かぶ。
何でそこまでして俺と話そうとしてくれるのか。いや、
｢だって、学校始まったらそれこそ二人でなんて話されへんやん。鳥井くんのこと、知りたいし｣
“二人で”という言葉に、反応してしまう。
きっと彼女にとってはなんて事ない言葉でも、俺にとってはなんて事なくない言葉だ。
｢あかん、かな…？｣
不安そうに眉を下げて言う姿にも、心臓が跳ねて顔に熱が集まる。
｢ぃ、いっすよ…｣
絞り出した声は情けなく掠れていた。
｢ほ、ほんま？じゃあ、明日からも通うなぁ！｣
ちらりと見た彼女は、それはもう嬉しそうで何となくほっとする。あんなに、嬉しそうにしてくれるんやな。
自然と頬が緩む。
｢あ、鳥井くん笑った｣
見られていたことに気づき、唇をきゅっと引き締める。見られてしもた。やばい。
｢あ、いや…これは、その｣
｢よし、目標できた。この夏休み中に鳥井くんを、心の底から笑わせることにする！｣
｢…は？｣
｢鳥井くんと仲良くなって、他クラスの男の子と一緒におる時くらいに笑ってもらえるように私頑張るな？｣
｢は、はぁ…｣
思ったよりも破天荒な彼女は、軽い足取りで俺に再度近づき手を差し伸べる。
｢え、なんすか…｣
｢んー、親交の印…的な？ともかく、これからよろしくね！｣
返事を言う間もなく取られた手は、彼女の小さな掌で包まれる。やわこいな…。
すぐに離されるが、残った温度は熱いままだった。
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