雲 ページ22
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やばい、寝れんかった。
昨日の夜もランニングをした時、Aさんから今日の話題を出されて動揺して買ったばかりの水を半分くらい零してしまった。それくらいに、緊張している。
服装は、変じゃないだろうか。普段使うことのない姿見で何度か確認していると母親がニヤニヤとこちらを見ていたので、半ばキレ気味に家を飛び出してきた。
｢ふぅ…しかしまぁ。はよ着きすぎたな…｣
集合時間より三十分ほど早く着いてしまい、どこかで時間を潰そうかとも思った。
が、そうしている間にAさんが来ていたら申し訳ないのでじっと待つことにしよう。
｢…暑いなぁ｣
ショッピングモールの館内は来る時に流れていた汗を冷やして、むしろ寒いくらいだ。
夏休みももうすぐ終わるということで、ショッピングモール内にはたくさんの人が溢れている。
この中から俺がAさんを見つけるのも、彼女が俺を見つけるのも難しいかもしれない。
一応お互いに今日の服装などを伝えてはいるが、似たような服装の人が多い。
暑いしシンプルなのでええやろ思ったのが、仇になったな。
｢あっ、希くん…！いた…！｣
｢わ、えっ…。A、さん…｣
｢よかった〜！見つけれた！｣
え、Aさんめちゃくちゃ可愛いんやけど。
ギンガムチェック？のスカートに真っ白なブラウス。清楚ってこういうのを言うんやなって格好。
｢よし、じゃあ行こっか！映画館って二階？｣
｢あ、そっすね…確か、二階に｣
｢エスカレーターどこだ？あ、あれか｣
｢そ、そんな走らんでも…！まだ時間あるし｣
｢だって、今日すっごい楽しみやったねんもん｣
あぁ、またそんな可愛いことを言って。
どんどんと好きになっていく。誤魔化せなくなってしまう。
｢希くんは、楽しみじゃなかった…？｣
｢そ、そんなんめっちゃ楽しみにしてたっすよ？！｣
｢んふ、そっか。…うれしい｣
少し照れたように笑うAさんは、本当に綺麗で可愛くて。キュンとする。
エスカレーターに乗る時に彼女を先に乗せてすぐ後ろに立つ。変なやつたまにおるしな。
うわ、髪めっちゃいい匂い…。柔軟剤何使ってるんやろ…。
いや、俺変態やん。好きな人の匂いがこんなにも香ってきたらそりゃあこうなるけども。
二階についてすぐ、映画館がありチケットやら飲み物やらを買って五番スクリーンに向かう。
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