雲 ページ20
******
もうすぐ、公園の入口が見える。
いうて入口も暗いから大して変わらんのやけど、行ってすぐにAさんの姿が見られるかどうかはめちゃくちゃ関係あるからな…。
｢あ、希くん！｣
姿が見えたのか俺の名前を呼んで、こちらに駆けてくるAさん。
少しずつスピードを緩め、息をしっかりと吸う。
｢はぁ…はぁ…遅れて、すまん…｣
｢いいよいいよ。すごい走ってきてくれたんやね。ありがとう。一旦ベンチで座ろう？｣
｢っはぁ…うん。｣
疲れて少しよろける俺を支えながらベンチに誘導してくれるAさん。触れた肌が熱い。
｢はい、これ。｣
｢え、水…。買って、くれたんすか｣
｢うん。途中で自販機あったし、疲れてるだろうなぁって思って。スポドリの方がよかった？｣
｢い、いや！めっちゃ助かる…ありがとう｣
素直にいただくことにする。
はー、これは生き返るわ。冷たくて喉を通っていく感覚を今まで以上に鮮明に感じる。
｢…希くん、そんなに急がんでよかったのに｣
｢さっきも言うたけど、この公園暗くて危ないやんか。｣
｢私そんなにか弱くないんだけどなぁ｣
｢実際にそうなった時に、本領発揮出来るかって言われたらわからんやろ？｣
｢ま、まぁそうやね…。ありがとう、希くん｣
｢いや、いいんすよ…。はぁ、よし！そろそろ行けるで｣
｢ほんま？なら、行こっか。｣
貰った水をウエストポーチに無理やり入れて、歩き出す。まだちょっと息が上がってるけど、あんまり遅くまで外おるんは良くないしな。
彼女の足を気遣いつつゆっくりと走る。随分走ってなかったからか、少しキツそうだ。
スピードを緩めて、景色を遅らせる。
｢だい、じょぶすか…？｣
｢…はぁ、うん。大丈夫｣
俺が彼女の限界を決めてしまっては意味が無い、彼女が大丈夫だと言うのならもう少しだけ…。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
