雲 ページ17
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階段をおりて職員室に鍵を返し、自転車置き場に向かう。鋭い日差しが降り注ぐ。
彼女は折りたたみの日傘を差して…。あれ。
｢今日は、自転車やないん？｣
｢あぁ、うん。昨日は曇りだったから自転車で来たんやけど。今日は暑いし、そこまで家も遠くないから歩いてきちゃった｣
｢ふーん。まぁ、焼けるしなぁ…。｣
｢あ、でも。私のスピードに合わせてたら帰るん遅なるよな…。｣
｢あー、それやったら…。後ろ、乗る？｣
｢えっ、いいん…？私、重いから漕がれへんかも…｣
｢いやいや。男子高校生舐めんといてや。｣
｢じゃ、じゃあ…。｣
そう言って彼女は傘を畳み、俺は先に自転車に跨る。続いて恐る恐る自転車に跨ろうとするが、ふと思い出してカバンから未使用のタオルを取り出す。
｢多分、痛いと思うしこれ敷いとき｣
｢そんなん、悪いよ。いけるいける｣
｢いいから、ほら。｣
有無を言わさずリアキャリアにタオルを敷いて彼女の手を引く。
｢乗り？はよ帰ろや｣
｢し、失礼します…｣
重みが加わると、ゆっくりと漕ぎ出す。
｢ぅわっ｣
｢危ないと思うから、掴んでていいっすよ｣
まだ不安定な自転車だと危ないし、そう声をかけるとゆっくりと彼女の腕が腹に回る。
近い近い。当たってる。A、さん当たってます。
今の俺すごい真顔やけど、そうじゃないと色々危うい。まさか、腕回ってくると思わへんやん！服、掴むくらいやと思ってたやんか！
あー、待って。俺汗臭ない？！やばい。
薄いシャツとインナー越しに彼女の体温を感じて、なんとも言えない気持ちになる。
落ち着け、落ち着け。Aさん乗せとるんやから、慎重に。
景色がゆっくり流れ、暖かい風が頬を撫でる。
自転車を漕ぐことに集中していると、漸く顔に集まっていた熱が逃げたような気がした。違う意味でまだ熱いけど。
｢…なぁ、希くん｣
｢えっ、はい。な、なんすか｣
｢ほんまに、ありがとうね。｣
彼女が、一体何に対して感謝を述べているのか。分かってはいるけれど、感謝されるほどのことをしていない。
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更新随分空いてしまい申し訳ないです。
同時更新してる作品の方がもうすぐで完結するので、もう暫くお待ちください。
【wrwrd】チョコレートみたいに甘く溶かして。【ut】
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