雲 ページ14
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｢あの、青木さん。肩、貸した方が楽じゃないですか｣
｢え？うぅん、楽、かもしれん…けど｣
｢な、なら俺、貸しますよ？あ、でも汗臭かったらすみません、チャリ乗ってきてるし…｣
｢いや、全然気にせんねんけど…。むしろ、なんか手伝わせてばっかりやから申し訳なくて｣
｢遠慮ってか、別に気にせんでいいんやって。俺がやりたくてやってるんで。…はい、肩貸すんで｣
｢何から何までありがとうね…。｣
彼女の腕を肩に回す。え、これだけやったら支えにくい…けど。腰に手回したらセクハラにならん？もうこれだけでもセクハラになりそうやねんけど。
｢あ、えっと…距離遠いから、歩きにくいかも…。｣
そう言って青木さんは、俺の宙に浮いたままの手を腰に…。腰に？！
｢…こうやって支えてくれた方が、歩きやすい…かも｣
｢あ、あぁ、あの嫌やっ、たら全然…支えてるの、嫌じゃ、ない…すか？｣
｢い、嫌じゃないよ…。鳥井くんこそ、歩きにくいやんね？腰引いてた方がバランスも取りやすい、と思って…。鳥井くんこそ、嫌なら全然大丈夫、やから｣
｢い、いや…その。付き合ってもないのに、触れられるの嫌とちゃう、かなって…｣
｢…気にしてへんから、いけるよ｣
何気ない、俺の事を気遣って放たれた言葉が胸に刺さる。彼女にとっては、特に気にもしないこと、なのだろう。しかし、俺はどうだ。
自分が気づかないふりをしていたにも関わらず、その気持ちに気づいて胸を高鳴らせている。
正直、めちゃくちゃ触れたい。けど、彼女が嫌がるなら絶対にしたらあかんし、したくない。
真意はどうであれ、触れても気にされていないということだ。少しだけ、悲しい。
ゆっくりと歩みを進める彼女に着いていると、いつもはすぐに流れる景色がゆっくりと進む。
他クラスなんて目にも止めないから、なんだか新鮮だ。
エアコンの風が涼しい。寒いくらいには。
｢はぁ、やっと着いた…ごめんなぁ鳥井くん｣
｢あんま、謝らんでください。｣
謝られるのは、何だかいい気持ちではない。
謝るくらいなら、別の言葉の方が嬉しい。
｢…謝るくらい、なら。“ありがとう”の方が、嬉しいっすよ…｣
｢…そう、やでな。鳥井くん、ありがとう｣
やっぱり、これって。
すき、ってことなん、かな。
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