【72】夢の中 ｰ四年間ｰ ページ22
まふまふ side
必死に歌を歌った。
喉が枯れても、「届け」と願い歌う。
けど、今目の前にいるのは家の戸を叩き僕を引きずり出した奴ら。
普通なら酷いことしてきた奴らにまで、届けばだなんて思わないだろう。
でも、でも、きっと
『まふさん！！』
君なら「見返すなら、音楽でしょ」って、後輩のくせに大きな背中で言うんだろ？
「僕には…近いみたいで、遠い世界だった」
目が、顔が、下を向く。
そこには沢山の「きもちわるい」「調子に乗るな」
というアンチコメントや、嘲笑い、僕を見る目が足跡のように僕を囲んでじわじわと広がっていく。
ほら、僕の声は届かない。
＿＿＿＿情けないな。
『貴方に憧れて、僕は歌おうと思ったんだ…』
立方体の中にいたかのように、ぐるりと目の前が回り目の前に白い世界が広がった。
そこに立つのは、幼い、九歳くらいの少年。
いや、九歳の頃のAだ。
その幼い瞳は、輝いていた。
家のパソコンで真剣に、そして楽しそうに僕の動画を聴いてくれてる姿。
全てが夢と希望に溢れていた。
その姿は愛おしく、そして何より嬉しかったんだ。
Aに音楽が届いていたことが。
僕の中にあった心の脆いガラスは、割れることなく溶けていく。
ピースを支えて、そして僕も、頑張らないと。
『＿＿＿ムライブ、頑張りましょう』
僕に微笑みそういう彼の姿は、今より随分、大人びていた。
＿＿＿
「ん゛っ…ぁ…朝…？」
「もう昼だよ」
この歳にしてこの起き方はやばい。おっさんだ。
と、考えるほど目覚めがいい。それは、そらるさんの言う通り、
沢山、寝たからだ。
『ん…ぁ、まふさん、そらるさん、おはようございます』
いつもより声が低くて、髪がボサボサになっているAが、かわいい。弟のような彼の頭をわしゃわしゃとなでる。
｢Aは犬じゃないぞ｣
｢って言いながらそらるさんも頭撫でてるじゃないですか｣
「おはよう」とそらるさんがコーヒーを淹れたカップを受けとるとAは｢ありがとうございます｣とうけとり、啜った。
『あ…あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします』
「ん、おめでとう、よろしくね」
部屋が開き、米津くんも頭がサイヤ人になりながら起きてきた。
＿＿＿
「東京ドーム、頑張りましょう」
＿＿＿
こんな、僕が？
コーヒーを一口飲み、ちらっとAを見た。
東京ドーム、か。
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雨音(プロフ) - 柊さん» ありがとうございます！がんばります！！ (2020年2月22日 22時) (
レス) id: 36e1edc774 (このIDを非表示/違反報告)
柊 - とっても面白いです！応援してます！ (2020年2月22日 19時) (レス) id: 6c7d5f5114 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - らんさん» 運命ですね。 (2020年2月9日 21時) (レス) id: 36e1edc774 (このIDを非表示/違反報告)
らん - 私の学校に 加藤 晴也 って名前の人いる！ (2020年2月9日 18時) (レス) id: 665c5b97f1 (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - 蒔さん» ご拝読ありがとうございます！頑張ります！！ (2020年1月21日 14時) (レス) id: 36e1edc774 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音 x他1人 | 作成日時：2019年12月27日 16時
