司帝国には眼鏡がないらしい (ページ10)

今日:35 hit、昨日:4 hit、合計:104,709 hit

第10話ページ10

｢ククク、いよいよ科学王国の力魅せどころじゃねえか。唆るぜ、これは…！！」

司の作戦は、戦闘員が揃い次第、武力で村を制圧するというものだった。つまり、司のように強い奴が大勢くるということだ。

｢でも、ジーマーでヤバいのは司ちゃんとこないだ起こした氷月ちゃんの2人かな。もし今そのどっちかでも来てたら＿＿

ぶっちゃけもう、逃げるしかないよ。全員で｣

それほどまでに強いのだ。それは、勝てるのか…？どうしようもない不安が押し寄せる。

話を聞くとゲン君が潜入し手引きするとの事で、先に村へやってきたらしい。
だが、時間稼ぎもそう長くは…

｢みんなー！！敵だよぉぉおお！！！｣

後ろから銀狼の叫び声がした。
橋の方へ行くとそこには橋から落ちそうになっている金狼とマスクをした男が立っていた。

｢金狼ちゃんが戦ってるの、氷月だ…！！｣

あれが、氷月＿＿＿

(あれ？)

なんか、どこかで…

｢銀狼、橋を斬り落とせ｣

その言葉にコハクが駆け出そうとするがコクヨウが掴んで止める。子供のいる住居区に入られたら終わりだ。そんなこと、銀狼だってわかってる。ふらりふらりと覚束無い足取りで縄に近づき、サクサクと銀狼は縄を斬り始めた。

｢早く…しろ、銀狼。俺はもう助からん｣

どうしようもなくなって、前に進もうと足に力が入る。しかし、その時誰かが私の腕を掴んだ。目で追うとそこには千空がいた。

｢できないよぅ｣

銀狼が小さく呟いた。

｢だって金狼が死んじゃうじゃんか…できるわけないよぅ｣

ぼろぼろと銀狼の頬に涙が伝っていく。

｢やだよぅ、兄ちゃん……！｣

「千空…っ」

視線で訴えるも千空は手を離さなかった。

「よせ、行くな。」

「でも、それじゃあ…わっ！」

千空は手に持っていた布を頭から被せた。これじゃあ何も見えない。

「これで顔でも隠しとけ。」

そう言って千空は私の前に立って何やら準備を始めた。私の前に立つ千空は初めて会った時のような華奢な少年ではなく、その背中は異様に大きくたくましく見えた。