司帝国には眼鏡がないらしい (ページ47)

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第47話ページ47

あの日から私はずっと監視付きの生活を送っていた。と言っても普段は氷月の後ろをついて歩いて、たまに羽京さんの付き添いをしているだけの退屈の日々。そんな日常を繰り返す中、今日も一日が終わるというときに、私は偶々すれ違った司の腕を掴んだ。

「！…A？」

名前を呼ばれてハッとした。私は両手を上げて無理やり笑った。

「はは、何でもない。ごめん。……行こう、羽京さん。」

「え、あ、うん。」

昔、海岸で一人の男を見かけた。男の背後には男の子がいて、その手には綺麗な貝殻が握られていた。

夜。

寝る準備をしていると、外に人の気配を感じて少し警戒する。「誰？」と控えめに声を出すと、岩陰から司が現れた。

「すまない、こんな時間に。」

「いや、いいけど…なんで？」

「うん、昼間、何か言いたいことがあったんだろう？それを聞きに。」

「っはぁ～。」

私はガシガシと頭を搔いた。

「夜ぐらいしっかり寝なよ。どこの大将も無茶ばっかりして馬鹿みたい。」

「それは、千空のことかい？」

「以外誰がいるっていうの。…とりあえず中に入りなよ。」

「え」

「え？なに。」

「少し、無防備すぎやしないかい？俺は男だよ。」

「知ってる。…さっきから何？変なことしてる？私。」

そう言い放つと司はそれ以上何も言わずに中に入って私と向かい合う形で座った。これは、私から話すべきなのだろう。私は正座をして膝の上で握った拳に少し力を入れた。

「初めまして、じゃなかったんだね。」

「…！」

「私たちはあの海岸で一度で会ってる。」

「…うん、そうだね。」

「ごめん。忘れてて。それを謝りたくて。」

一度会った時のある人に、初めましては失礼だ。そこら辺の礼儀・礼節はしっかりと教え込まれた私にとって大きな罪悪感の波に襲われた。