司帝国には眼鏡がないらしい (ページ45)

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第45話ページ45

世界の浄化。
一貫して司がかかげる、司の根本的な思考。きっと誰が何を言っても、今この考えを揺らがせることはできないんだろう。

｢千空の首さえ差し出せば、炎色反応など君が楽しむ程度の科学と、村人全員の安全を保証するよ｣

｢……おぅ、悪くねぇな死ぬよりは｣

だからまた、彼の思考のために必要な科学を、消そうとしてる。
力は確かに人を支配できる。けれど＿＿

｢なんて言うとでも思ったか？落とせよ、とっとと｣

｢…そうですか｣

真に信ずるものがある者に、支配という名の力は干渉できない。

その瞬間、私は縄をほどき羽京さんが持っていた刀を奪い刀を抜いた。

「「！！？」」

氷月が槍を少し動しクロムは真っ逆さまに滝へと落ちていく。私は助走をつけて刀をクロムに投げつけようとする。うまくいけばフードにを貫通し、近くの木にぶら下がるように刺さるかもしれない。その咄嗟の判断が間違いだった。刀を投げようとする私の腕を、司が掴んで止めた。

と、同時に片手をあげて羽京に合図し、クロムに向かって矢を放たせた。
それはクロムの服に命中し向かいの木へと突き刺さる。

｢これ以上攻めても無意味だね。彼は飴でも鞭でも裏切らないよ。でも、うん、収穫はあったね。｣

司は私を見下ろして小さく笑った。

こいつ…！私が拘束を解くのをわざと誘ったのか…！司は私の手首を軽くひねって刀を奪うと滝に放り投げた。その瞬間、私の唯一の武器がなくなった。

｢来た目的は推測するしかないですね。羽京クン、クロム君を発見した場所は？｣

羽京さんは私たちが墓場にいた事を知っている。羽京がその事を話せば、ケータイが見つかってしまう。お願い、羽京さん…！

｢例の奇跡の洞窟にいたよ。まぁ、狙いは硝酸かな｣

そう言って羽京は微かに笑みを浮かべた。

……っマジで神！と言って抱き着きたくなる衝動を抑える。