司帝国には眼鏡がないらしい (ページ43)

今日:31 hit、昨日:4 hit、合計:104,705 hit

第43話ページ43

弓を切り落とせば確実に音でバレる。私は煙幕で最初に見つけたクロムに駆け寄った。クロムの周りには角度がばらばらの弓が地面に刺さっていた。これは…

「クロム、降参しよう。」

「！ああ、俺も今同じこと思ってたぜ！けどよA、お前は司に狙われてるんだろ？捕まるのは俺一人で十分だ。」

「何言ってんの。私の仕事は君たちの護衛。どこまでもお供しますよ。」

「けどよ！」

「はいはい、いーから白旗上げる。私は死なないし、君たちも死なせない。約束するよ。」

私が譲る気がないことを悟ったのかクロムは諦めたようにしょうがねぇと笑った。そして私たちは白旗を上げた。直後後ろには弓を構えた戦士が立っていた。

白旗をあげた後、私たちは縄に縛られて坂を昇っていた。
少し遠くからマグマが地団駄を踏んでいる様子が見えた。

「あはは、もういいや縄なんか。だって君今逃げる気ないし。わざと白旗上げたでしょ？｣

「…羽京さん、私の縄は？」

「Aはダメ。いつ反撃するか分からないでしょ。それに、拘束もしないで連れてきたら司に怒られるからね。」

「たしかに」

そう言って柔和な笑みを浮かべる羽京さん。クロムの縄は外されるが、私の拘束は解いてもらえないのか。まあ仕方がない。

｢脳筋くんとあともう1人逃げた人、仲間を助けるためにさ。あのまま煙幕が晴れたら僕も脳筋くん撃つしかなかったしね。すごい判断だよ、あんな場面で…実質君達の勝ちだ｣

｢お、おぅ。そうか…？｣

普段褒められることが少ないからか、クロムは嬉しそうに頬をかいた後、ハッとした様子で口笛を吹き始めた。大方、羽京に騙されないぞ！とでも思っているんだろう。百面相しているクロム、面白いな。

「相変わらず元気そうで安心したよ。なんか、前より楽しそうだね。」

「！ふっははっ、楽しいですよ～。なにせ妖精が二人もいるんですから。」

「妖精？」

「ええ。超絶可愛いんで、今度紹介しますよ。」

そういうと羽京さんは小さく笑いを漏らした。きっと羽京さんも誰かが傷つくことは耐えられない人だ。そこをうまい具合交渉すればこちら側に誘い込めるけど、それは千空たちの専門かな。