司帝国には眼鏡がないらしい (ページ30)

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第30話ページ30

あの時は幸い朝日が昇る前だったため辺りが暗く、私のだらしなくも赤くなった顔を誰にも見られずに済んだ、はずだ。そろそろ朝日が登ってくるということで、私たちは早速携帯づくりの続きに取り掛かろうとしていた。千空達が採集してきたタングステンが朝日を受けて蒼く光を放っている。

「すごい、宝石の山見たいです…｣

「みたい、じゃねえ。宝石の山なんだよ。ククク、超～～絶レア金属が中に入ったお宝だ！」

村の人達はその光景を目を輝かせてみていたけど、マグマは何がすごいんだ、という感じだった。でも、このタングステンは司に勝つための石。武力最強の司に携帯作って情報戦で出し抜く、そういう計画。

「しかし千空、一体この石をどうやってケータイに使うんだ？」

「ケータイの心臓部にどうしても熱に負けねぇ金属がいる！この青い光の中にあんだよ！宇宙最強の耐熱金属、タングステンがな…！」

興奮冷めやらぬといった様子で千空は語った。隣でクロムも「宇宙最強ヤベー！」と叫んでいる。

「しかし、一体どうやって石の中からとりだすのだ？」

「これが相当鬼難易…」

ガシャン！という大きな音がして、千空とコハクは話を止める。同時にクロムが叫び声を上げた。

「あああ！！！！何やってんだマグマ、テメー！！なんでもう石叩き割ってんだ！？」

「あ？石の中から取り出すんだろ。とっととぶっ壊しゃ1発じゃねぇか」

いや、確かに理由はわかるし実にマグマらしい考えだとは思うよ。でも間違ってたらどうするつもりだったんだ…。幸い一旦粉々にする必要があったらしいから良かったけど。

「ひぃぃ…勝手すぎるんだよぅ…」

「ジーマーで共感…」

「まぁともかくだ！この粉々になった青い宝石を俺らが化学でなんやかんやして歯磨き粉見たくすっから…」

「あ～うん。なんやかんや。あの聞いてもわかんないやつね」

「仕上げにその歯磨き粉を水素ってのでサビ取りする。ガラス容器の中でホッカホカに温めりゃ完成だ！」

これまた簡単に説明をしてくれる千空だが、実際の作業は地獄なんだろうなぁ。マグマのおかげで完璧に粉々になった青い宝石ことタングステンをビーカーに詰めていく。なんやかんや、の過程を聞いたあかつきには、その話を理解するだけで一日を消費するだろう。