司帝国には眼鏡がないらしい (ページ16)

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第16話ページ16

｢建物などまた造ればよい！1人の犠牲者も出さずに輩を撃退した我々石神村の完全勝利だ！！｣

村の人たちが歓喜の声を上げる。私は気に凭れかかって安堵の息を漏らした。ずるずると腰が抜けたように地面に座り込む。

「よぉ。」

俯いていた顔を上げて上を向くと生意気にも口角を上げて不敵に笑う後輩が立っていた。

「随分と大活躍だったみてぇじゃねぇか。ゲンから聞いたぜ。」

「あ゛ー、お陰で喉ガラガラ。」

こんなに声を張って指示を出したのは初めてだからか、私の声帯は悲鳴を上げていた。かすれる声を聴いて千空は腰を曲げて私の顔を持ち上げた。綺麗な緋色の瞳が私を射抜く。また難しそうな顔をして眉をひそめた。

「口開けろ。」

「え、なに。怖いんだけど。」

「早くしろ。」

「…。」

「もっと。」

最初は渋々口を開けたが、千空先生の指示で大きく口を開ける。少し恥ずかしくなって視線を逸らす。

「えーって言ってみろ。」

「えー…。」

千空は「少し腫れてんな」と言って私の隣に座った。

「水分取ってしばらく安静にしときゃ治る。大声は出すなよ。」

「ださないよー。」

かすれた声でしゃべるのも精一杯だ。私の喉ってこんな弱かったんだ。と初めて自分の体について知る。私は小さく笑って千空の方を見てニコニコと笑った。その様子を見て怪訝な顔をする千空。

「千空せんせぇ～い。コンタクトって作れる？」

「まあいずれはな。」

「それは楽しみだねぇ。眼鏡も便利だけどさー、やっぱりコンタクトの方がいいよ。ほら、眼鏡ってレンズのある部分しか綺麗に見えないけど、レンズがない部分を見るときはどうしてもぼやけちゃうでしょ？氷月君と戦ってるときそこが死角になって苦戦を強いられちゃったしね。…ってあ。」

氷月君との戦いのことを掘り起こしてしまった自分の発言に冷や汗が垂れる。そういえば無理やり表に出て戦っちゃったんだっけ～。

「その件についてはしっかり反省してもらわねぇとなぁ、Aセンパイ。」

「あ、はは～…スミマセン。」

「一言の謝罪で済むか。メンタリストのゲンと一緒に反省会だ。二度とこんなことないようにな。」

「ひぃ…。」

野菜の妖精だと思っていたのにうちの後輩が怖い。