司帝国には眼鏡がないらしい (ページ15)

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第15話ページ15

不敵な笑みを零したゲン君は突如として花に包まれた。空中から白い花がヒラヒラと舞落ちて来る。

「この花知ってる？犬鬼灯って言うんだけど。日陰にしか咲かないはずだから、内緒の目印にはぴったり！ステージでも使ってたお気に入りの花でさ～。

いつの間に移動してきたのか、橋の丸太の上にはゲン君が立っている。

「花言葉がね、"嘘つき"｣

それはもう、語尾に音符でもついているんじゃないかと言うほど軽快に言い放った。

「……本当にちゃんとしてますね、科学王国の君たちは＿＿＿｣

｢この戦闘自体が陽動だと気づいていれば、もっとちゃんとしてましたが｣

よう、どう？
その言葉に目を見開いてようやく理解した。咄嗟に村の方へと振り返る。そこには轟轟と赤い焔が広がっていた。

「僕の右腕、ほむらクンです。脳の溶けてる男共達とは違ってすごくちゃんとしてくれますよ、彼女｣

あぁ、本当に…

(いい性格してる…っ！)

私は拳を強く握りしめた。そして頬を撫でる強風に気づく。この山卸の強風は火を煽ってしまう。

「とにかく水だ！水もってこい！！子供と爺婆は科学倉庫に避難しろ！｣

千空の指示のもと、私達は消火活動を行っていく。しかし、火は収まるどころか燃え広がる一方だった。最初からこれが目的だったのか。火をつけて住人を炙り出す。千空も、この村の人達も見捨てるなんてできない。人質さえとってしまえばあちらの勝利なのだから。

くそっ、やられた。

｢スイカはどこだ！？｣

コハクの声が響く。銀狼の話によれば温泉地帯の方へ行ったらしい。その発言を聞いて千空の顔に緊張が走る。

「…。はいはい、考えるのもいいけど動く。千空、コハクの二人でスイカを探しに行けばいい。」

「しかし…」

「死んでも死守する。ここは任せてよ、コハク。」

「…ああ！頼んだ！」

スイカのことは千空達に任せて消火活動に専念する。動けるものは水を運び、消化活動。子供、高齢者、怪我人は科学倉庫に避難。

「避難者の非難が完了したら点呼、人数確認してー。」

「わかった！」

「それから負傷の有無も！」

「ああ！」

金狼に指示を出して水がめに水をくむ。炎は中々に消えなかったが、消火活動中にスイカ以外の全員の安否が確認された。嵐がやむころには、火は消し終わり行方不明だったスイカも千空達が連れ戻して来ていて、住居だった残骸と、火消しの後を私はただ黙って見つめていた。