司帝国には眼鏡がないらしい (ページ2)

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第2話ページ2

司は歩きながら今の世界について説明してくれた。どうやらあの日から、人類は石化し、復活液を掛けた人間だけが復活できるらしい。私からしたら摩訶不思議だ。

「その復活液があればみんな助かるんだね。すごい。」

つまり文明の復活。眼鏡、いや、コンタクトも夢じゃない。そう思っていると司は立ち止まって私を見下ろした。

「いや、全員じゃない。」

「え？」

「君には、うん、すべて話すべきかな。復活させるのは若者だけだ。」

「…なんで。」

「『純粋な若者だけが自然と生きる楽園』を作るためだよ。旧世界では、大人は子供の足かせにしかならなかった。この美しい自然も文明によって汚されることが無いようにする。うん。君なら分かってくれるだろう？」

ふと、あの人たちの言葉が思い出された。

「この道場を継ぐんだ。」

「私の研究を継ぎなさい。」

似た者同士の頑固親子。師匠である家の祖父と先生である研究者の父。

「確かに、勝手に私の未来決めつけてきたり、鬱陶しい時もあった。」

爺ちゃんもお父さんも一人娘の私に未来を託そうとした。ハッキリ言ってあの二人は嫌いだ。お父さんなんかお母さんが死んだ時まで研究、研究、研究……。殺したいほどに恨んだ時もあった。けど、けどさ…。

「それは、なんか嫌だ。」

「…。」

「助かる人も助けないのは、うん、嫌だ。うまく言えないけど、今だってあの人たちの事嫌いだけど、それでもさ…。わかる？」

「わからないな。」

「そ。…まあ、いいや。私じゃ君に勝てそうにないし。」

「大人しく従いますよ。」と無理に笑う。武器もなく、眼鏡もなく、抵抗するにはあまりに無謀。そんなことを考えていると、また新たな疑問が浮上する。

「それじゃあ、司は誰から助けてもらったの？」

復活液を掛けると治るなら、誰が司を復活させたのだろうか？もしかして自力で！？霊長類最強ならいけなくもない、のか…？

「うん。千空という男だよ。」

その言葉に心臓がはねた。

「せん、くう。」

「…知り合いかい？」

「いや、珍しい名前だなぁって。」

「それもそうだね。」

司は千空との出会い、そして決別を私に話してくれた。表情はぼやけて見えないが、なんだか寂しそうで悲しげに見えた。