：７ ページ7
.
一限休講にしてほしい。
駅前のケーキ屋さんの新作が食べたい。
稜雅が朝起こしに来て。
これはこれくらいで叶う、そんな基準がなんとなくわかってきた。
願いを叶えるためには色々と考えなきゃいけないのかと思ってたけど、そうでもないって。
稜「お前もうレポート終わってんの？！」
「終わったよー稜雅頑張ってね私ゲームやってるから」
稜「ふざけんな俺のもやれ」
「無理」
稜雅の部屋でゲームをしながらくつろぐ。欲しいものと引き換えに対価を与える、そんなの普通の事だ。ちょうどこのゲームだって、宝石と引き換えに強い武器を貰ってる。それが、普通なんだ。
.
稜「おつかれ」
ある日の夜、バイトを終えて裏口から出ると稜雅が壁にもたれて立っていた。マフラーで口元が隠れていたけど、私が出てきた音を聞くとぱっと顔を上げる。
「おつかれー、っと」
稜「ナイスキャッチ」
空中で弧を描いた暖かいミルクティーが、無事に私の手に収まるのを見た稜雅は先に歩いて行った。
稜雅が迎えに来てくれるのはよくある事だった。それはきっと稜雅の気分次第。暇なら来てくれるし、やりたいゲームがあれば来ない。
「寒いねー、雪降りそう」
稜「お前は脂肪多いから大丈夫だろ」
「は？うっざ」
稜「あー今ので折れたわ」
「んなわけないじゃん」
冗談で軽く蹴りを入れるとそんな事を言う。稜雅がポケットから取り出したカイロで私の頬を挟むと、ふっと笑った。
こんなんでも、やっぱり稜雅は優しくて。この優しさは対価で手に入れたものじゃない、稜雅の本物の優しさだって思うと、すごく安心できた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 162人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：な な . | 作成日時：2019年2月25日 23時
