誘拐されてメイドになれと言われた【JN】６ (ページ21)

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２５３．やさしいひとページ21

JK side

「…ジョングガ」

ヒョンとAを、二人きりにしてきた。

「…ユンギヒョン。A起きましたよ」
「あぁ、知ってる。」

僕が自室に戻って間も無く、尋ねてきたユンギヒョン。お前とヒョンが騒がしかったからな、なんて言って軽く笑った。余裕そうにしているけれど、僕はちゃんと知っている。濃くなった目の下のクマがそれを物語るだけでなく、ヒョンが一番、犯人の捜査に力を入れていたからだ。

この一週間いつもユンギヒョンの部屋だけが、遅くまで点っていた。

「お前、いいのか」

…話、逸らしたつもりだったのに。騙されないで尋ねてくるユンギヒョンは意地悪で…

すごく優しいんだ。

「……とっくの昔に、失恋してますから」

言わせないでくださいよーなんておどけてみたけど今、ちゃんと笑えてたかな。

正直泣きそうだよ。抱き締めたいのにできない。この気持ちがある限り、Aには触れられない。ヒョンを裏切れないよ。

…今は辛いけど。でもきっと大丈夫…僕なら、

「らしくねーな」

「…え、？」

近付いて来て、ぽんっと僕の頭に手を乗せる彼が一瞬見せた顔は僕よりも悲しかったんじゃないかな。なんとなくそんな気がした。そしたらヒョンはそのままわしゃわしゃと僕の髪を掻き乱して、歯を出して笑った。

「仕事はもちろん、くだらねーただの遊びでだって、思い通りになるまで頑固に諦めなかった奴はどこのどいつだよ。」

「っ、」

諦めたくなきゃ諦めなきゃいい
そんな言葉をくれたんだ。

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