誘拐されてメイドになれと言われた【JN】６ (ページ11)

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２４３．充満ページ11

JN side

焦りと不安が渦巻く中、Aのスマホを追って車を走らせた。

「ここって……っ…」

そして辿り着いたのは以前Aが住んでいた…マンションで。気持ち悪いくらい心臓が脈打ち、動悸が治まらなかった。

彼女はここにいる。

エレベーターに駆け込んで微かな記憶を頼りに5、という数字を押して。…Aのことは攫う前に色々調べていたから、不幸中の幸いというか…とりあえず今はもうなんでもいい、Aが、危ない。

エレベーターの扉が開いた瞬間こじ開けるように身を滑り込ませて…とにかく早く彼女のところに行きたくて。足を止めた部屋の前は、微かに甘い匂いがしていた。

鍵のかかったドア。思わず舌打ちをして、何度も何度も体を打ち付けた。

早く、早く開いてくれ…っ

「A…！！」

幸い、鍵は年季が入って古くなっていた。ガンッ、と力ずくで蹴れば派手な音を立ててドアが開け放たれる。

そのまま部屋に足を踏み入れれば＿＿＿

「う、…っ…」

Aの、香り

噎せ返りそうな程甘く濃い匂いに、無意識に顔が歪んだ。

「…A、？」

ドクッ、ドクッ、耳元で響くような鼓動。
掴まれたみたいに心臓が痛い。

そっと足を踏み出して視界に入った部屋の床には…真っ赤な鮮血が飛び散ってた。

ヒュっ、と喉の奥へ空気が通る。

息をしているのに、していないような……………

そんな感覚だった。

「っ、」

テーブルの影に見えた、白くて細い脚。きっとそれは、Aのものだった。

動く気配はなかった。

何かの間違いであってくれ。
そう願いながら恐る恐る近付くと、

真っ白なワンピースを紅く彩る血液が、腹部あたりに拡がっていた。

「A…っ！！」

皮肉にも、目を閉じたAの顔は怖いくらいに綺麗だった。

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