１９６．安心できる場所 ページ7
U side
もう泣くな、とか、そんなこと一言も言わなくて。
泣いていいよって、落ち着くまでこうしてるからって、かけるのは私を甘やかす言葉ばかり。私をぎゅっと包みながら背中を撫でてくれる大きな手に、何故かわからないけどとても安心して。
私にとって本当に落ち着ける場所は、グクなのかもしれない。
そう考えるとまた涙が溢れてきて。ああダメだ私、本当に泣き虫なんだ。
ぐすぐす泣いて額を彼の胸に押し付けて。しがみつくみたいにしてグクのパジャマを握り締めていた。
「A……」
穏やかな声が降ってきた。両頬を暖かい手が包んできて、ふっと顔を上げさせられる。それからぐしゃぐしゃになった前髪を優しく整えてくれて、さらりと髪に指を通して。
「やめてよ…ぶさいく、なのに、」
「そんなわけない」
あまりにも真っ直ぐな目だった。吸い込まれそうで、頬を包んだ彼の手指が涙の線を拭い消してくれた。それでも容赦なく溢れるのを、私は止められない。それにも泣けてしまうから、今はもう何を考えても無駄なんだろうなって。
睫毛を伏せると、不意に彼の影が落ちた。次の瞬間には瞼に柔らかい感触があって、近くにグクの端正な顔があったから、目にキスされたんだと理解した。ちょっとびっくりして肩が揺れてしまったけど、彼がそれを気にする様子はない。
ほんの少し体を強ばらせていたら、今度は下瞼に口付けられて。ぺろっと涙を掬われた。
「っ…、グク」
「…あまく、なってるね」
瞳は少し切なげで。唇を舐めるその仕草に思わずドキッとしてしまった。頬に添えられたままの手が急に恥ずかしくなって、視線を落とす。彼の言葉を気にする余裕が…その時はなかった。
「その顔好きだよ、泣いてる顔」
ぽろりとまたひとしずく零れてシーツに染みを作ったのが見えた後、グクは私の顔を覗き込んでそう言い、眉を下げながら微笑んだ。
「うそだ…」
「嘘じゃない。かわいいよ」
ヒョンが泣かしたって思ったらむかつくけど、って苦笑いして、ぽんぽんって頭を撫でられた。そしてまた私を抱き寄せるから、もうどうでもよくなってしまいそうだった。肩口に顔を埋めるように抱き竦められ、私はその温もりに包まれた。
泣き疲れて、涙が枯れる頃にはもう、意識を手放していたんだと思う。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 579人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ろーらん?(プロフ) - ぽちさん» ぽちさん初めまして！コメントありがとうございます；＿；とても嬉しいです！私もハッピーエンド信者なので皆がハッピーな終わり方にしたいなと…。とにかくたのしみにしていてください！笑応援ありがとうございます！；＿； (2019年9月16日 13時) (
レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽち(プロフ) - こんにちは☆グクさんの役回りが切なすぎるけれど…ついつい望んでしまうのはジン様のとの明るい結末なんです///ステキな作品なので終わって欲しくない気持ちもありますが…更新がんばってください☆(語彙力足らずにて失礼いたします) (2019年9月16日 11時) (レス) id: 8ba320eacd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ろーらん | 作成日時：2019年7月20日 10時
