２１７．正気じゃない ページ28
・
ビリビリ響くような掌の疼痛に頭が冴える。やってしまった…と手を出してしまった動揺と後悔に、身が固まった。
『ッたいなぁ………、』
『ご、めんなさ…っや…ビョンジェ、やめて…！』
『許さない』
「っ……っ、」
木霊した。忌まわしい記憶の中の、彼の声。私は目を強く閉じた。ぶたれる、食べられるって、怖くて堪らなくて。
「…、うま…そ…」
降ってきた声は確かにそう言った。それから、近付いたソクジンさんの気配に、さらに体が強ばって、抵抗できず恐怖に震えていたその瞬間に、走った首筋の痛み。
「ぃ……っく、」
噛み付くなんて可愛いもんじゃない。きつく歯を立てられて、まるで目の前の餌に食らい付く獣のようで。ブツっと肌を割かれる感覚に体が跳ねてまた涙が溢れ出す。抉れる皮膚の激痛。ぬるい液体が肌を伝ってそれが舐め取られた時、ああ、私このまま死ぬのかなって思った。
もう身を委ねてしまおうと体の力を抜いたその時だった。
「ジニヒョン！！」
荒々しく開け放たれた扉の音。怒号にも似たその声は、疑うはずもなく…グクのものだった。
「何してるんですか…っ！」
バタバタと慌てて近付いてきた彼は私達を引き離し、私の肩を強く引き寄せた。
鋭い眼差しでソクジンさんを睨み付けるグク。ぐ、と私の肩を抱くグクの手に力が篭もって、私は身を竦めた。
「グギ、それ、美味しそうだよ……？」
回り切っていない舌で呼ばれた「それ」とはきっと私のこと。正気じゃない。でもその言葉に深く傷付いて。
やっぱり、本気で私と食べようとしていたんだ、
「…ひ、」
「触んなッ！」
ふらり、伸ばされたソクジンさんの手の指先が一瞬私の頬を掠めて。鋭い口調で言い放ったグクは加減もせずその手を払いのけた。
「…A、おいで」
低い声でそう呟いて、彼は着ていたカーディガンを私に羽織らせ、肩を抱えて少々乱暴に立たせた。肩に手を回されたまま、その場から逃げるように足を進めて。振り返ろうとしたらグクは見ちゃダメ、って私を制した。
「え…ジョングガ？どうした、の……」
部屋を出る時、丁度戻ってきたナムオッパ。彼はグクを見るなり不思議そうな顔をし、その後に私を見て、言葉を詰まらせた。
「そういうことです。」
まだ険しい顔のグクは、颯爽とナムオッパの隣を通り過ぎ、私を促した。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 579人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ろーらん?(プロフ) - ぽちさん» ぽちさん初めまして！コメントありがとうございます；＿；とても嬉しいです！私もハッピーエンド信者なので皆がハッピーな終わり方にしたいなと…。とにかくたのしみにしていてください！笑応援ありがとうございます！；＿； (2019年9月16日 13時) (
レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽち(プロフ) - こんにちは☆グクさんの役回りが切なすぎるけれど…ついつい望んでしまうのはジン様のとの明るい結末なんです///ステキな作品なので終わって欲しくない気持ちもありますが…更新がんばってください☆(語彙力足らずにて失礼いたします) (2019年9月16日 11時) (レス) id: 8ba320eacd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ろーらん | 作成日時：2019年7月20日 10時
