191.隠そうとしないで ページ2
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「Aッ、」
「?…グク?」
あの後慌ててハヨンにAの居場所を聞いた。庭の手入れをしてるって言うから、すぐさま踵を返して止まらずここまで走ってきて。
彼女の言った通りAは庭で花に水を与えていた。切羽詰まった声で呼べば、少しだけビクッと肩を揺らし声に反応したA。息を乱している僕を、呆けた顔で見つめていた。
「どうしたの?走ってきたの…?」
忽ち不安そうな面持ちになって手に持っていた如雨露を地面に置き駆け寄ってくる。僕とは真逆で、いつもと変わらないAの様子にちょっと拍子抜け。
だけど、安心したのも束の間で。
ふわり、
あのシロップのような…甘い涙の香りが鼻を掠めた。やっぱり泣いていたのだと再確認。ああ、むかつく、こんな時でもその甘い匂いに誘われてしまうから、自分に腹が立つ。
「…泣いたの?」
なんかあった?とか、心配で…とか、回りくどい言い方は他にいくらでもあったはずなのに、どうして僕はこんな言い方しかできないんだろうか。
面食らった顔で、一瞬言葉に詰まった彼女は丸い目で僕を見つめていた。あぁ、って声を漏らして俯くから、図星なんだとわかる。本当、君は嘘が下手だ。ジンヒョンには上手いくせにね
「夜、話す気になれるなら部屋行くから。…また後で連絡する」
「っ……」
じわりと目を潤ませて、同時に濃い涙の匂いが辺り一辺に広がった。よっぽど辛いことがあったのか、僕の言葉がどうやら彼女の琴線に触れてしまったみたいだ。
香りに誘われて心臓がドクンと脈打つのに、僕は無視をして。優しく頭を撫でたら、泣かないように必死に我慢した声がありがとう、と呟いた。
今すぐ抱き締めて慰めたかったけれど、抑制剤を飲んでいない僕にとってこれ以上の距離でフェロモンを感じてしまうのは自滅行為。彼女を襲いかねないから今だけはぐっと堪える。
「やっぱ、グクには嘘つけないや、」
はは、って乾いた笑みを零した彼女は、貼り付けたような笑顔をしていた。そうやっていつも無理に笑ってその場を凌いでいたのか?打ち明けず心の内に隠し留めておくつもりでいたのか?
そういう所が気に食わない。
「…邪魔してごめん、じゃあ後で」
「うん」
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ろーらん?(プロフ) - ぽちさん» ぽちさん初めまして!コメントありがとうございます;_;とても嬉しいです!私もハッピーエンド信者なので皆がハッピーな終わり方にしたいなと…。とにかくたのしみにしていてください!笑応援ありがとうございます!;_; (2019年9月16日 13時) (レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽち(プロフ) - こんにちは☆グクさんの役回りが切なすぎるけれど…ついつい望んでしまうのはジン様のとの明るい結末なんです///ステキな作品なので終わって欲しくない気持ちもありますが…更新がんばってください☆(語彙力足らずにて失礼いたします) (2019年9月16日 11時) (レス) id: 8ba320eacd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろーらん | 作成日時:2019年7月20日 10時