検索窓
今日:7 hit、昨日:21 hit、合計:81,954 hit

191.隠そうとしないで ページ2








「Aッ、」

「?…グク?」

あの後慌ててハヨンにAの居場所を聞いた。庭の手入れをしてるって言うから、すぐさま踵を返して止まらずここまで走ってきて。

彼女の言った通りAは庭で花に水を与えていた。切羽詰まった声で呼べば、少しだけビクッと肩を揺らし声に反応したA。息を乱している僕を、呆けた顔で見つめていた。

「どうしたの?走ってきたの…?」

忽ち不安そうな面持ちになって手に持っていた如雨露を地面に置き駆け寄ってくる。僕とは真逆で、いつもと変わらないAの様子にちょっと拍子抜け。

だけど、安心したのも束の間で。

ふわり、
あのシロップのような…甘い涙の香りが鼻を掠めた。やっぱり泣いていたのだと再確認。ああ、むかつく、こんな時でもその甘い匂いに誘われてしまうから、自分に腹が立つ。

「…泣いたの?」

なんかあった?とか、心配で…とか、回りくどい言い方は他にいくらでもあったはずなのに、どうして僕はこんな言い方しかできないんだろうか。

面食らった顔で、一瞬言葉に詰まった彼女は丸い目で僕を見つめていた。あぁ、って声を漏らして俯くから、図星なんだとわかる。本当、君は嘘が下手だ。ジンヒョンには上手いくせにね

「夜、話す気になれるなら部屋行くから。…また後で連絡する」

「っ……」

じわりと目を潤ませて、同時に濃い涙の匂いが辺り一辺に広がった。よっぽど辛いことがあったのか、僕の言葉がどうやら彼女の琴線に触れてしまったみたいだ。

香りに誘われて心臓がドクンと脈打つのに、僕は無視をして。優しく頭を撫でたら、泣かないように必死に我慢した声がありがとう、と呟いた。

今すぐ抱き締めて慰めたかったけれど、抑制剤を飲んでいない僕にとってこれ以上の距離でフェロモンを感じてしまうのは自滅行為。彼女を襲いかねないから今だけはぐっと堪える。

「やっぱ、グクには嘘つけないや、」

はは、って乾いた笑みを零した彼女は、貼り付けたような笑顔をしていた。そうやっていつも無理に笑ってその場を凌いでいたのか?打ち明けず心の内に隠し留めておくつもりでいたのか?

そういう所が気に食わない。


「…邪魔してごめん、じゃあ後で」

「うん」




192.あの日のように→←190.滲む視界



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (77 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
579人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ろーらん?(プロフ) - ぽちさん» ぽちさん初めまして!コメントありがとうございます;_;とても嬉しいです!私もハッピーエンド信者なので皆がハッピーな終わり方にしたいなと…。とにかくたのしみにしていてください!笑応援ありがとうございます!;_; (2019年9月16日 13時) (レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽち(プロフ) - こんにちは☆グクさんの役回りが切なすぎるけれど…ついつい望んでしまうのはジン様のとの明るい結末なんです///ステキな作品なので終わって欲しくない気持ちもありますが…更新がんばってください☆(語彙力足らずにて失礼いたします) (2019年9月16日 11時) (レス) id: 8ba320eacd (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ろーらん | 作成日時:2019年7月20日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。