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190.滲む視界 ページ1

U side




ぐちゃぐちゃだった。会いたいと思った時に現れて、まさかの偶然に嬉しくて舞い上がっていたら…この様。涙で前もまともに見えなくて、また破片で手を切った。指先より、胸がぎゅうっと苦しくてそっちの方がずっとずっと痛かった。

「ぃ、……ふぇ…っ…」

ぴり、と指先に小さな痛みが走る度、涙がぼろぼろと溢れて止まらなくて。

もう何度手を傷付けたのかわからない。









自分でも、こんなに泣き虫だったっけ、と思うくらい泣いてしまって…誰かに見られなかったことが一番の報いだった。

まだ仕事も残ってるのにこんな顔じゃ気が気じゃないなあ、なんて自室に戻った私は脱衣所の鏡を見て思った。ばしゃばしゃと洗い流して、タオルで水を拭う。鏡の中の私は、まだ少し目が赤いままだった。

ふ、と手に視線を落とせば、ぎょっとするほど切り傷ができてしまっていた。よくもまあこんなに怪我ができたもんだ。逆に感心する。

ここまでやっちゃったらもう隠す術もないよな、って乾いた笑みが零れた。すごい数になりそうだけど…絆創膏貼って、少しだけお化粧直しして、さっさと仕事に戻ろう。いつもの私に、戻ろう。



















JK side





夕方、仕事から帰って顔を出したキッチンに、彼女の姿はなかった。

あるのは残り香、濃く甘い匂い。酷く本能を揺らがせるその香りに、一瞬ぐらりと目眩がした。何だ?と不安が渦巻く。何故か分からないけれど、嫌な予感がしたんだ。

感じた覚えがあって、その面影が残る匂いに僕は確信を得た。いつしか嗅いだことのある涙の匂い、Aの匂いだ。それは、彼女がここで涙を流した、という事実を物語っているのに違いなかった。

「………っ、」

何が原因で泣いたのかは、想像がつく。





191.隠そうとしないで→



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ろーらん?(プロフ) - ぽちさん» ぽちさん初めまして!コメントありがとうございます;_;とても嬉しいです!私もハッピーエンド信者なので皆がハッピーな終わり方にしたいなと…。とにかくたのしみにしていてください!笑応援ありがとうございます!;_; (2019年9月16日 13時) (レス) id: c96f5d7f61 (このIDを非表示/違反報告)
ぽち(プロフ) - こんにちは☆グクさんの役回りが切なすぎるけれど…ついつい望んでしまうのはジン様のとの明るい結末なんです///ステキな作品なので終わって欲しくない気持ちもありますが…更新がんばってください☆(語彙力足らずにて失礼いたします) (2019年9月16日 11時) (レス) id: 8ba320eacd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろーらん | 作成日時:2019年7月20日 10時

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