episode.8 ページ8
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「＿の＿という機種はいかがでしょうか。
前の型からは防水機能もかなりアップしていて＿＿」
「ほーめっちゃええらん！
なああべちゃん！」
「……え？…っと、なんて？」
「やからな、＿＿で」
あの日から俺はどうもおかしい。
今みたいにぼーっとすることが増えたし、
注意力が散漫になって人や物にぶつかることが日常になった。
この前なんて歌番組のリハーサルでステージから落ちそうになったりして。
寸前の所でひかるに助けられたけど、
メンバーやスタッフさんにも心配かけて仕事にまで影響が
出始めている。
"阿部どうした？"
"いつものあべちゃんじゃない"
"大丈夫ですか？"
そんな言葉を言われるのが辛いし、キツい。
でも、何よりそれを言わせているのが自分自身であることがやるせなかった。
「ほら、あべちゃん、買ったからな。いくで。」
スマホが入った紙袋を提げた腕に引っ張られながら、
携帯ショップを後にする。
「よし。オッケー！移行できたで！
バックアップとっといて良かったな〜さすがやわ！」
そう。
スマホは完全に故障してしまったが、実はいざという時のためにパソコンにバックアップを取っておいたのだ。
あの時の俺、ナイス。
「…はあ。今の俺だったらそんなところまで気が回らなかったろうな。
ありがとう康二。
移行もちょっと不安で…なんかうまくいかないような気がしてたから。」
「それは全然ええよ。ええけど…
"そのあべちゃん"はええくない！
……もうこうなったら…海いくで！！」
「…っ」
"海"という単語にどきんと心臓が動く。
「でも…」
「モヤモヤを晴らしに行くんよ！
そんなんじゃ仕事にならへん。明日や明日！
プラン練らんと…ほなまた！」
嵐のようなスピードで康二は部屋を飛び出していった。
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次回更新 ➡︎ 5/10(金) 18:30頃
続く
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作者名：にな | 作成日時：2024年3月20日 14時
