共犯マッチング【紫】 (ページ30)

今日:281 hit、昨日:756 hit、合計:101,169 hit

11 ページ30

・

『お疲れ様です。』

受付の方に挨拶して自動ドアを抜けると、

冷たい風が頬をかすめた。

もう3月の半ばに入るとはいえ、やっぱり夜はまだ肌寒い。

寄るところがあるとマネージャーの送迎を断ってきたのだが、

実際行くあてなんてものはなく。

かといって別の思惑があるということでもない。

ただただ少し歩きたかったというだけで。

？「あれ、もしかして南Aさんですか？」

？「お、ナイスタイミング。」

？「俺たち運が良いみたいだね。」

あなた方と会いたかったわけではないのは確か。

？「……なんか、警戒されてる…？」

？「ひかるの顔が怖いんじゃない？」

？「俺たち怪しいものじゃないから安心してね。

…って言ってもアラサー3人に囲まれたら怖いか！笑

まあとりあえず何か好きな物頼んじゃってよ。

これメニューね！」

笑顔の裏の思考が全く読み取れないのが怖くて、

手渡されるメニューを受け取る手が無意識に震える。

声をかけられた後、

頑なにだんまりを決め込んだ私は、いつのまにか個室の飲食店に連れ込まれていた。

目の前のSnow Manのお三方に。

岩本照。宮舘涼太。阿部亮平。

私調べによると、メンバーの中でも観察眼が鋭く深澤さんとの関係を察知される可能性が高そうな3人だ。

いつかは勘づかれるとは思っていたけど、

いくらなんでも早すぎる。

私はボロを出している覚えは全然ないから…。

おそらく深澤さんの様子がどこかおかしかったのだろう。

深澤さんとは先に話しているのか。

それとも私が先なのか。

どちらにしろここでやらかしたら終わりなのは明白だ。

でも大丈夫。

女優南Aは、演じられる。

『ウーロン茶をお願いします。』

いつもカメラにやるように、

3人に向かって微笑んだ。