precious * (ページ2)

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【右側、取れた】

ほら、と優香が指さすその先は風に揺られてひらひらと舞うさっき結んだはずの紐

「もーーー詰んだ、むり」

【うん、頑張ろうA！】

「はあ、」

またさっきと同じように手を伸ばして紐を取ろうとするが風に揺られて上手く掴めない

「もう風やんでーーー、」

【あはは笑 Aがんばれ～ ... あ、】

融通が効かない紐と必死に戦っていると左側から伸びてきた私より遥かに長い腕

男の子の手をしたそれはあたかも簡単に紐を掴んだ

『これここに付ければいーの？』

「え、あ、うん、」

竜生だった

さっき重たそうな荷物持って倉庫に消えていったのにもう戻ってきたの？

『ほい、できた』

「あ、ありがとう、」

『ほんとチビやね～笑』

「だからチビじゃないし！！158あるから！！！」

『んなムキになんなよー怖いわ笑』

じゃあねおチビちゃん、と一言添えて肘掛かと思うくらい慣れた手つきで私の頭に手を置いて歩いていった

【やってんな～深田も笑】

「肘置きにされたんですけど」

【私が言ってるのはそこじゃないから笑】

【深田今年のあのイベントどうなるんだろうね～】

「なんだっけそれ」

【なんか公開告白するやつだよ、去年あいつやばかったじゃん】

「あー、」

高身長にスポーツ万能、顔面のこの3点を兼ね揃えた彼は学年問わずモテちゃうわけで

それにあの陽キャぶりだからクラスに収まらず学校中の女の子は黙っちゃいない

去年なんか、その公開告白をするというこの学校きっての生徒会主催イベントに参加した女の子の3分の2を竜生が占めた

まあ、竜生は誰の告白も受け取らなかったんだけど

【あんたもモタモタしてたら取られるよ？】

「、別にあっちはそんな目で見てないでしょ」

【いや～、分かんないよ？っていうかほんとにそんなグズグズしてると今年危ないんじゃん？あんたも参加しなよ】

「いやむりむりむりむりむり」

【 ...そんな全力否定？】

告白して、今の関係が崩れてしまうのならこのままでいい

竜生の一番の理解者でいられるなら私はそれだけで十分

ぱっと視線を向けた先に竜生が立っていてそのままばっちり目が合ってしまい口パクでチビと訴えてくる竜生

負けじとうるさいと返し、笑ったその顔にまた彼が好きだと思った

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