たとえ聖女じゃなくても2【d!】

84話 ページ34

「…とれない」

オスマンさんに握られた腕から…アールグレイの香水がついている。こっそり仕込まれたのだろう。
擦っても消えない存在に嫌気をだしながら戻っていると

彼がいた。

zm「もう上がったん？」
「はい」
zm「早いやん。…今日はだれとね「ゾムさん」

zm「ん、？」

Aの表情は、いつもより作りっぽかった。なんで、何かあったんかと聞く前に彼女の態とらしい笑顔が動く

「今日は、一人で寝たいです。」
zm「ダメや。お前、そういってねないやん」
「持ってきた書類は終わりました。する仕事は持ってません。」

zm「…A、？」

手を繋ごうとすると、自然に避けられる。…Aの手首の傷が…やけに綺麗や。治っているではないんやけど…血を流された感じ。

え、あ、オスマンにバレたん？だから嫌な顔してるん？

zm「A、その」
「おやすみなさい」

言い放つAの背中をおうことが出来ない。仮にそうだとして俺も知ってる、なんて言えばどう思われるかなんて…分かりきってる。

嫌や。Aに嫌われたくはない。それなら言わない方がいい。Aがいつか俺を信じてくれる日まで耐えた方がいい。…

zm「…」

【荷台の中】

「…さむ、」

荷台にタオルの一つや二つあるだろと見越していたが…すべて兵士さんたちが持っていったらしい。意外に広い空間に1人は…心細いな。仕方ないけど

「…」

横になると、寒さで余計に体が丸く縮こまる。表面積をできるだけ減らさないと、ダメだ。ちゃんと…しないと

「…」

重たくなっていく瞼。…外から聞こえる談笑の声が羨ましかった。私もそんなふうに働かないで許せる存在になれたらよかった。

85話→←83話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す