新人声優と最推しさんの恋愛事情 3

273話 ページ32

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目の前にそびえ立つ扉との距離は手を伸ばせば余裕に届く距離なのに
偉く遠く感じてしまう


”よし行こう”と決めてドアノブに伸ばした手はほんの少し躊躇するだけで
今しがた決めたのに早くも揺らいで行くのがイヤになってしまって止めて



…また決めて動かして止めて

を繰り返して早……10分？



「大丈夫？」


『大丈夫じゃないです』



なんて言うのか、行きたいけど行きたくないとでも言うべきか
すっごい私のメンタルが削……抉りとられそうで行きたくない

やめて、今は豆腐より柔らかいのよ
サ○ティ○ワ○ンのアイスのように抉りとれちゃうから！

まぁ、そんな事言っても容赦してくれるような先輩達じゃないけどね！！
……いや、いるのか知らないけど


頭を抱える私の後ろに立つ紀章さんから
「ん〜と？」とゆったりとした声が聞こえてくる




「それはもっと俺とイチャつきたいって言う暗示か何か？」


『行きます！』


「は〜い」


『……行きます』



……声がガチだったからさ、言っちゃったけどさ

もしやと振り返ってみると笑顔で「行かないの〜？」と
わざとらしい声をあげる紀章さん



…………。







あーーーーーーー！声優ってずるいなー！大人ってずるいなー！！

なまじ返事しちゃったから取り消す訳にもいかなく
色々と棚に上げてドアノブを捻って思いっきり押す



『……え』


「……あ」


「ぶぇっ」


『え』


「あ」


「ぶっ…w」



ガチャリと扉が開くとパッチリと目が合った人物は「しまった」とでも言いたげな声を上げて
思いっきり押して勢い余った扉は何かにぶつかって戻ってきた


……これが作用反作用ってやつですか







『え、あの…………今の失敗した蛙が潰れたみたいな声、何ですか…？』






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疲れてるかもしんない

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